授業料改定の方針について説明する東大の藤井学長(10日、東京都文京区)

東京大の藤井輝夫学長は10日、授業料を約10万7千円引き上げる方針について記者向けの説明会を実施した。東大は引き上げの実施を9月中にも決める見込み。発言の要旨は以下の通り。

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【冒頭発言】

藤井学長 授業料改定と学生支援の拡充について、全学の会議に諮る案がまとまった。世界水準の教育を提供することを考える中で、2025年度入学者から64万2960円に改定する案を作った。高等教育のグローバルな競争が激しさを増しており、学生のための教育環境の改善は待ったなしである。

あわせて大事なことは学生支援拡充だ。経済的に貧しくとも優秀であれば東大で学べるという伝統を重視し、授業料免除の枠を拡大する。

一部免除については、出身地が遠いなど、個別の事情を勘案して実施したい。

授業料引き上げによる増収分は学修環境の整備に活用する。学生が一元的に自分の学修を管理できるシステムを構築したり、経済的な相談支援を強化したりする。

今回で全体をカバーできるわけではないが、財源を多様化するなかで実施していきたい。教育学修環境を世界に誇れるものにしたい。

【質疑】

問 今後の手続きの流れは。

藤井学長 今日、部局長の会議で承認を得て案がまとまった。今後会議に順次に諮り、できるだけ速やかに進めたい。問題なく了承されれば、今月中に決まる見込みだ。

問 この案について学生と対話するのか。

藤井学長 予定していない。この案は6月の「総長対話」と、学生へのアンケート結果を踏まえて作った。なんらかの形で説明して理解してもらうことは必要だ。

 「教育環境の改善が待ったなし」とした危機感とは。

藤井学長 先進的なシステムを導入しようとするとかなりの費用がかかり、授業料だけではまかなえない。グローバルに見たときに、学びの環境整備を進めていかないと置いていかれる危機感がある。

 地方大学への波及についてどう考えているか。

藤井学長 授業料は国による「標準額」があり、それぞれの大学で設定すべきものになっている。私たちが上げたからといって、直接的につながっていくとは考えていない。それぞれの大学ごとに財務状況があり、目的とすることが違うため、各大学が事情に合わせて判断するものだ。

問 今日の部局長会議では全員賛成だったのか。反対意見もあったのか。

藤井学長 いくつかコメントはあったが、基本的には承認された。

問 約20年にわたって値上げしてこなかった。

藤井学長 今始めないと毎年、教育研究環境への投資ができなくなる。そういう意味では一刻も早く始めるべきだという思いもあるが、いろんな意見があったため、苦渋の決断でもあった。

問 引き上げによる増収額と、教育環境改善に必要な金額にかなり開きがある。実効性をどう考えているか。

菅野暁理事 必要な額は143億円で、増収が13億5千万円とギャップはあるが、多様な財源で対応する。その一つとして学費を上げる。何かに偏らず全体的に負担することで持続的に改善をしていきたい。授業料免除には2億4千万円かかる。

問 国立大授業料の引き上げ幅の上限である20%を上げてほしいといった考えはあるか。

藤井学長 これは国全体の高等教育への財政負担をどうすべきかに関わってくる。日本の国立大のあり方として、どういう財政負担をしていくか議論した上での決まり事になると思う。標準額はずっと据え置かれてきて、今回は法令上許される範囲での改定。それ自体を動かすのならば、大きな視点での議論が必要になる。

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