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 北海道がアイヌの人たちを対象に2023年に実施した「北海道アイヌ生活実態調査」で、「差別を受けたことがある」と答えた人の割合が、前回17年の調査時から約6%増の29・0%に上ったことが判明した。特に顕著だったのが、新たに回答項目に追加されたSNS(ネット交流サービス)上での被害で、全体の30%以上を占めた。

 調査は、同化政策と差別にさらされたアイヌの生活を改善するため、所得や進学率、必要とする施策などを調べる目的で、1972年から数年ごとに実施されている。

 結果を受け、鈴木直道知事は10日の定例記者会見で「非常に残念だ」とした上で、初めて道民を対象にアイヌの人たちへの意識調査を今月から開始したことを表明。加えて「SNSによる偏見や差別は、全国の方々が正しい理解をされていない中で行われている可能性がある。国は全国調査を実行していただきたい」と意識調査を道外に広げる必要性を強調した。

 今回の生活実態調査で把握できたアイヌ民族の人数は1万1450人。約2万4000人だった06年から半数以上も減少しており、アイヌ政策課の担当者は「高齢化や都市部への流出などで市町村が把握できるアイヌの人口は年々減少傾向にある」と話す。

 また、同調査では差別経験の有無の他に、法律で初めて「先住民族」と規定したアイヌ施策推進法(アイヌ新法)の認知度などについても新たにアンケートを実施。「知らなかった」「制定されたことは知っているが内容はよく知らない」と答えた人の割合を合わせると80%を超え、当事者への認知が進まない現状が浮き彫りとなった。【金将来】

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