中小企業を中心に後継者問題は深刻だ。中小企業庁によると、2023年の後継者不在率は54・5%で、18年以降減少傾向にあるが、高水準が続く。
日本政策金融公庫総合研究所が23年に行った「経営者の引退と廃業に関するアンケート」(有効回答271件)では、経営者の引退で20~23年に廃業した中小企業の95・9%が「後継者を探さずにやめた」と回答。その理由として「誰かに継いでもらいたいと思っていなかった」と答えた人が55・0%と最も多かった。「子どもに継ぐ意思がなかった」と答えた人も8・5%おり、15~19年の廃業より2・8ポイント上昇。その前の10~14年より5ポイント上昇していた。一人っ子の増加は後継者候補の減少であり、企業の存廃にも影響することがうかがえる。
一人娘で家業を継いだ三浦明利(あかり)さん(41)が身を置く寺の世界でも、少子化に伴って僧侶のなり手が減少するなど後継者問題に頭を抱えている。高野山真言宗の担当者は「昔は寺に生まれた子どもの全員が僧侶になることもあったが、今は兄弟姉妹の数が減っている」とも指摘。地方を中心に過疎や檀家(だんか)の高齢化が進み、廃寺や統合も起きている。
宗派の中には、後継者問題に直面する寺院を支援する動きもみられる。浄土真宗本願寺派では、07年に後継者紹介事業「NET縁(えにし)」を開始。これまでに寺に住職候補の僧侶を紹介する「入寺コース」で45組が成立し、寺の住職や跡取りに結婚相手を紹介する「結婚コース」で32組が良縁を結んだ。
高野山真言宗でも、既婚や独身、男女を問わず寺に入りたい宗派の僧侶と、寺との縁をつなぐ「後継者支援システム」を展開する。【塩路佳子】
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