東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所事故の避難者を支援する国の「福島再生加速化交付金」を巡り、交付金を原資とした基金の21億円超が使われる見込みのないまま「塩漬け」になっていたことが12日、会計検査院の調べで分かった。基金の管理などを担う省庁に残高を国庫に返還する措置を取るよう求めた。

再生加速化交付金は原発事故の影響を受けた地域の復興を促すため、2014年に創設された。長期避難者向けの住宅整備、避難者の帰還・移住支援など計画が長期間にわたる事業は、福島県や市町村が交付金を原資に基金を設け、取り崩しながら複数年かけて実施するスキームが構築された。

交付金制度の所管は復興庁だが、交付や基金の管理は事業ごとに文部科学省や厚生労働省、農林水産省などの省庁が担う。基金の保有高が事業の実施状況に比べて過大と判断された場合、担当省庁は交付対象の自治体に国庫に返還するよう指示する必要がある。

検査院によると、基金を使った事業は22年度末現在で262あり、保有高は計約806億円9600万円。22年度末までに事業が完了した126事業のうち、半数を占める63事業は事業完了から1年以上がたち、使われる見込みのない基金が計約21億900万円残っていたという。

検査院はこのうち文科省、厚労省、農水省、国土交通省が所管する60事業の計21億145万円について、国庫へ残額を返還するよう交付対象の5市町村に指示することを求めた。他に厚労省の所管していた3事業については検査院の検査を受け、既に国庫に返還された。

復興庁は毎年度、自治体から事業の進捗状況について報告書の提出を受けており、個々の基金の執行状況や残高を把握している。検査院は復興庁に対し、進捗に関する情報を担当省庁に共有した上で、基金の保有高を確認する必要性を周知するよう求めた。

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