「政治的、宗教的活動に使用するおそれがある時は(公民館の)使用を許可しない」。所沢市議会で13日、こんな文言を含む新条例が成立した。施行は来年4月1日だ。公民館は従来、各党や候補者の集会などに使われており、複数の市民団体や市議が「新条例は(利用者の)使用制限を強める内容だ」と反発している。一方の市側は「政治集会などへの使用は従来通り許可する」と火消しに追われ、条例成立直後には、市長が条文への懸念にも理解を示す異例の事態となった。一体どういうことなのか。【高木昭午】
新条例の名称は「所沢市まちづくりセンター設置条例」。従来は市教育委員会と市役所市民部が協力して管理してきた公民館を「まちづくりセンター」の一部とし、管理は市民部が一元的に引き受けるとの内容だ。「(センターは)公民館の機能を有する機関とする」との条文もある。
公民館設置の根拠である社会教育法は、公民館がしてはならない行為として「特定の政党の利害に関する事業」などを挙げる。これについて文部科学省は2018年の通知で「公民館を政党又は政治家に利用させることを一般的に禁止するものではない」との解釈を示している。
市は新条例について「社会教育法と同じ趣旨を盛り込んだ」と説明する。しかし、社会教育法は、公民館が実施する事業が特定の政党に偏ることなどがないよう「公民館側を制限」しているのに対し、新条例は市民ら利用者側の「利用の制限」を条文に掲げた。また、公民館に関する市の現行条例は「使用を許可しないことができる」という文言だが、新条例は「許可しない」と、より踏み込んだ表現になっている。
これに対し、複数の市民団体が「新条例は社会教育法の趣旨に反し、使用制限を強める内容だ」と反発。団体の一つは市に公開質問状を提出していた。市担当職員の判断次第で、政治集会が禁止されたり許可されたりと判断が分かれかねないとの懸念も出ていた。
市議の一部も新条例に懸念を示し、13日の市議会本会議に急きょ、現行条例の表現を生かして新条例案を修正する議案を提出。しかし、6日の市民文教委員会で原案が既に可決されていたこともあり、採決では賛成9、反対23で修正案が否決され条例が成立した。
小野塚勝俊市長は13日の議会後、報道陣に対し「(公民館を)これまでと変わらず使えるよう職員に強く徹底する」と話したが「この条文だと市民に懸念を持たれるのは理解できる」と付け加え、将来の改正に含みを持たせた。
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