大阪を拠点にシンガー・ソングライターや作家、俳優など多彩な表現活動を続ける趙博(チョウバク)さん(67)が手がける一人芝居「ヒロシマの母子像―四國五郎と弟・直登―」の全国巡回公演が8月から始まった。長崎県内では9月25日午後6時半、南島原市深江町戊の「星のきかんしゃ」である。【宇城昇】
2024年は広島の反戦詩画人・四國五郎の生誕100年・没後10年。戦争を憎み、平和のために生きた四國に共鳴した趙さんは「反戦平和の思想と行動を今こそ打ち鍛えたい」と語る。
絵本「おこりじぞう」の挿絵などで知られる四國五郎(1924~2014年)は徴兵先の旧満州(現中国東北部)でソ連軍との激戦を生き延びた後、3年間のシベリア抑留を経験した。広島に帰郷して弟の直登が原爆の犠牲になったと知り、弟が死の間際まで付けていた日記を母から受け取る。その夜、自身の日記に「直登の死に対する悲しみを怒りと憎しみに転化させよ!」と書いた。
趙さんの一人芝居は、兄弟の絆を軸に、平和を希求する思いを語りや歌で構成する。四國が手がけた絵や詩、直登の日記などを織り交ぜた。母子のつながりを断ち切る戦争への怒り、それを許さない愛情。タイトルは四國が生前に発表した詩画集から発案した。
趙さんは生前の四國とは面識がなかったが、19年に大阪大総合学術博物館であった回顧展で衝撃を受け「何としても伝えたい」との思いに駆られた。23年夏に大阪市内で初演し、名古屋と東京での公演も会場は満席と評判になった。その台本を改訂し、今夏から関西を皮切りに全国巡回公演に臨んでいる。
趙さんは「四國さんが生きていればウクライナやガザを見て何と言い、どんな作品を作っただろうか。被爆を体験したこの国で、反戦平和の思想がなぜ根付かなかったのか。芝居を通じて問いたい」と言う。四國の長男、光さん(68)=大阪府吹田市=は「父は自分の作品は目的ではなく、平和を訴える手段と言い続けていた。こうして現代に生かしてもらうのはありがたい」と話している。
前売り2500円、当日3000円、中学生以下無料。問い合わせはコラボ玉造(090・8146・1929)。
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