全国の消費生活センターに10〜20代の若者から寄せられる多重債務の相談が増えている。主な要因とみられているのが成人年齢の引き下げ。自立に困難を抱える人のトラブルが多く、19歳で自己破産した例もある。関係機関は啓発に力を入れるものの、専門家は今後も件数は増えると指摘。「借金問題は必ず解決できる。早めに相談してほしい」と訴える。

成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたのは2022年。18、19歳でも保護者の同意なくローン契約を結んだり、クレジットカードを作成したりできるようになった。

一方、引き下げ前から出ていた「社会経験が少ない若者の消費者トラブルが増える」との懸念は現実になりつつある。国民生活センターによると、多重債務に関する相談件数は10代、20代とも23年度は過去10年で最多。10代の増加率は顕著で、引き下げ前の21年度は90件だったのが、23年度は倍近い175件に達した。

「俺でも作れるかどうか、インターネットで申し込んでみた」。中四国地方の自立援助ホームで生活する男性(20)は、施設のスタッフからクレジットカードを作った理由を問われてこう答えた。22年の春、18歳になってすぐに入手した。

定職に就いていないにもかかわらず、外出機会が増え、転売目的で新品のスマートフォンも7台契約した。抱えた借金が約150万円に膨らんだため、債務整理に向けて日本司法支援センター(法テラス)と契約。19歳の時に自己破産が完了した。

施設関係者は「入居者の自己破産に立ち会う機会が今後増えるのは間違いない」と断言する。

虐待や貧困など複雑な家庭環境や発達特性の影響で、金を正しく使ったり、計画的に考えたりする習慣が身についていない入居者が大半を占めるためだという。男性は幼少期に注意欠陥多動性障害(ADHD)の診断を受けており、母親からの虐待経験もあった。

消費者トラブルを避けるには、正しい知識が欠かせない。全国の少年院では引き下げに合わせて、18歳以上の在院者の自立を目的としたプログラムを導入。契約とそのトラブルに関する法教育を行っている。

法テラス香川の松本邦剛弁護士は、自身で契約できる若年層の増加を踏まえ「若い世代に特化した法律相談や講演会を検討したい」と話す。

日弁連消費者問題対策委員会の小林孝志副委員長は、若い人の自己破産の件数は増えると指摘。最悪の場合、自ら命を絶とうとする人もいるため「借金額が大きくなる前に、弁護士会や法テラス、消費生活センターをはじめとする公的団体を頼ってほしい」と呼びかけた。〔共同〕

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