[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1330)

 関東から沖縄に赴任して1年余が経過しました。こちらに来る前の沖縄のイメージは、健康長寿。ところが、循環器内科医として勤務してみると、働き盛り世代の急性心筋梗塞をたくさん目にします。

 本当にこの県は健康長寿なのか? なるほど、2022年に厚生労働省が公表した「都道府県別の平均寿命」で、沖縄県は男性が全国43位。女性は16位でしたが、前回から後退していました。健康長寿は過去のもののようです。

 細かく見ていくと私の実感通りで、働き盛り世代の急性心筋梗塞、脳出血の発症率、死亡率は軒並み全国ワーストクラスとなっています。

 脳心血管疾患の危険因子は、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などです。それらと密接に関係しているのが肥満ですが、沖縄の肥満率は全国ワーストで、1日の歩行距離も全国平均を大きく下回ります。健康意識の改革が必要なのは明らかです。

 これらの疾患の怖いところは、昨日まで元気だった人が突然亡くなったり、寝たきりになってしまったりすることです。

 沖縄は県民全体で子どもたちを大切にしていると思いますが、働き盛り世代で突然倒れてしまうと、子どもたちのためにしてあげるべきことができなくなってしまいます。

 高齢化社会が深刻化し、われわれ働き盛り世代への負担は非常に大きくなっています。お世話になった世代を必死に支える傍ら、次の世代の子どもたちにしてあげられることはどんどん限られてきています。子どもを大切に思う気持ちはまず、働き盛り世代一人一人が健康でいることから始まるべきです。

 私は中学生の時に病気で父親を亡くしました。残された人の気持ちは痛いほど分かりますし、同じ思いをする人がなるべく減ることを願います。

 健康診断を受けていない方、またはその結果を放置している方、喫煙している方、運動習慣のない方。健康意識の改革が、子どもたちの未来のためにできる第一歩です。まずは朝の30分の散歩から始めてみませんか?

(藍原和史・県立宮古病院循環器内科=宮古島市)=第1、2、4水曜日掲載

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