秩父鉄道(本社・埼玉県熊谷市)が、秩父市のふるさと納税の返礼品として、三峰口駅(同市荒川白久)でのSL転車台乗車・駅員体験を提供する。同社が鉄道体験を返礼品にするのは初めて。人気返礼品のウイスキー「イチローズモルト」の提供を一時停止した影響で2023年度の寄付額を大きく減らした秩父市にとって、渡りに「船」ならぬ「SL」の試みと言えそうだ。【照山哲史】
同社が「沿線の市町に協力できることはないか」と昨年から検討していた。企画は、三峰口駅構内にあるSL転車台に乗って方向転換を経験したり駅構内を走行したりするほか、駅の放送案内や出発合図の体験、秩父駅までのSL乗車などの内容。10月6、19、25日と、11月8、15日のいずれも午前10時半~午後2時で、寄付金額は18万円。高校生を除く18歳以上が対象で、募集するのは各回1組2人まで。
ふるさとチョイスのホームページ(HP)の秩父市ページ(https://www.furusato-tax.jp/city/product/11207)で受け付ける。9月18日現在、10月6、19日分の受け付けは終了しており、秩父鉄道は「HPで募集中を確認のうえ、早めに申し込みを」と呼びかけている。
総務省が先月公表した、ふるさと納税の寄付額調査によると、秩父市の23年度の寄付受け入れ総額は1億9546万7000円。22年度まで4年連続で5億円以上を集めたが、ウイスキーの提供停止などで前年度比3億3000万円以上減らした。県内の自治体では22年度の3位から14位に下げている。
市民が他自治体へ寄付したことによる市民税の減収分と、市が寄付を受けた額を差し引きした「収支」は黒字を維持したが、22年度は約4億6000万円だったのに対し、23年度は約1億1500万円に縮小。今年度から専従職員を配置し、返礼品の新規開発などに取り組んでいる。
9月定例市議会の一般質問でも、議員から「注目される事業などを対象に、返礼品の必要がないクラウドファンディングの導入を」「秩父夜祭の山車の引き手など体験型の返礼品を」など新たな取り組みを求める発言が相次いでいた。
秩父鉄道は「特別な体験を通じて、秩父地域や秩父鉄道に親しみを持っていただければ」とPR。市財政課は「さまざまな形で提案された内容について検討し、導入すべきものは活用していきたい」としている。
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