吉塚駅の構内に設置された分身ロボット。普段はみどりの窓口で利用客への案内業務を担っている=福岡市博多区で2024年9月6日午前10時23分、城島勇人撮影

 外出が困難な障害者が、自宅から「分身ロボット」を遠隔操作して接客業務に就く福岡県の実証事業が福岡市博多区のJR吉塚駅で実施されている。

 ロボットは、オリィ研究所(東京都)が開発した「OriHime(オリヒメ)」(高さ23センチ、幅17センチ)でカメラ、マイク、スピーカーを備える。遠隔操作で首や手足を自在に動かしたり、マイクを通じて会話したりでき、その場にいるのと同様のコミュニケーションができる。

 オリヒメは吉塚駅のみどりの窓口に設置され、これまで駅員が担っていた道案内など利用客への案内業務を担当する。JR九州の駅でオリヒメを使って案内するのは今回が初めてという。

 実証事業に参加しているのは脳性まひや精神障害などで外出が困難な県内在住の男女15人。平日の午前10時~午後5時にシフトを組んで働き、週10時間以上の就労継続が可能かなどの課題を11月29日まで検証する。

 実証事業の見学会では、服部誠太郎知事が利用客として訪問。駅員をイメージした制服を着たオリヒメに九州大学病院までの道を尋ねると、福岡市の自宅で遠隔操作している女性が約700メートル離れた病院までの道のりを説明し、「暑いので気をつけていってらっしゃいませ」と丁寧な言葉遣いで送り出していた。

 女性は看護助手として働いていたが、足の病気が悪化し、つえなしでは生活ができなくなったという。「外に出られない者にとってありがたいお仕事。お客様に『ありがとう』と言ってもらえるのがうれしい」と話した。

 県によると、案内役の時給は1000円で、障害者の所得向上にもつながっているという。服部知事は「障害のある方がそれぞれの状況や希望に応じて、生き生きと働ける県にしていきたい」と力を込めた。【城島勇人】

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