武見敬三厚労相
「先ほど総理と一緒に大石知事、鈴木市長と面会をいたしました。この中でまず、これまで厚生労働省、長崎県、長崎市との間で調整を続けてまいりました具体的な対応策について、総理からお話しがありました。具体的には、被爆体験者を対象に行われている現行の事業を抜本的に見直し、被爆者と同等の医療費助成を行うことといたします。今般の訴訟の原告であるかどうかに関わりなく、これまで被爆体験者とされてきた方々全員を対象として、精神疾患の発症は要件とせず、また、精神疾患に関連する限定的な疾病に限らず、幅広い一般的な疾病について被爆者と同等の医療費助成を行う事業を創設をいたします。このような新たな事業の創設による医療費助成の抜本的な拡充に当たりましては、現行の精神影響等調査研究事業を行った形ではなく、精神科の受診を不要とするなど、利便性を高めた端的な医療費助成事業といたします。年内のできるだけ早い時期に医療費から助成を適用することとし、この新たな事業の詳細設計を長崎県、それから長崎市と早急に調整をしてまいります。

次に長崎地裁判決への対応についてですが、ご案内のように原告44名の方については先行する訴訟で最高裁まで争われ、手帳を交付しなかった県、市の処分は適切であるとの判決が既に確定をしております。一方で、今回の地裁の判決では、このうち29名の方については、再度、同じ判断が残る15名の方については、異なる判断が示されました。本判決では、15名の方を被爆者と認める重要な根拠の一つとして、この15名の方が原爆投下時に居住されていた地区の一部に「黒い雨」が降った事実を認定しておりますが、この事実認定の根拠として用いられた重要な証拠資料について、先の最高裁で確定した先行訴訟では「バイアスが介在している可能性が否定できない」として事実認定の根拠として用いておりませんでした。その結果として、今回とは異なる判決となったわけでございます。このように司法判断の根拠に対する考え方が最高裁で確定した先行訴訟と今回の判決で異なるということから、上級審の判断を求めることが必要と考えたわけであります。こうした根拠が不確かな要素を組み合わせて個別の原告に対して示された司法判断であり、同じ事情を持つ他の同様の地域に関する考え方が示されていないために、この被爆者健康手帳を交付するべき統一的な基準を作ることが難しく、令和3年広島高裁判決と比べても、本判決における根拠に基づいた被爆者援護法の公平な執行は困難であると考えております。したがいまして、法務大臣とも相談の上、この15名の方を被爆者と認めた長崎地裁判決については、上級審の判断を仰ぐべく、控訴せざるを得ないと考えております。知事、市長に置かれましては、苦渋のご決断をお願いすることになりますが、ご理解をいただけるようお願いをしたところでございます」

Q:政府として控訴することを決めたということでしょうか。
武見厚労相
「政府としての立場は、このようなかたちで決めさせていただきました」

Q:被爆体験者の仕組みを抜本的に見直すという点について、現行の区分を見直すのか、それとも新たな枠組みを作って広く救済するのでしょうか。

厚労省の担当職員
「今の被爆体験者の方々に対して行っている医療費助成、この対象者は同じでございますけれど、中身について見直しを行うというものであります」

Q:地元からは控訴を断念してほしいという要望が届いていたと思いますが、その思いをどのように受け止めたのでしょうか。その上で今回の判断、どう判断したのでしょうか。

武見厚労相
「今回は特に総理と共に地元でも原告の皆さん方とお会いをして、そのお気持ちを直接お聞きをし、そしてそれはしっかりと重く受け止めなければならない、このように考えております。したがって、その点に関しては、これから実務者間で具体的な協議に入りますけれども、こうした医療費助成等について、これを抜本的に見直して幅広く全ての方々を対象として適用をする、医療費の助成を適用する、こうしたことをやったわけであります。ただやはり、控訴するということに関しては、やはり司法の立場、やはり法治国家としての国の立場を考えながら判断をせざるを得なかったと申し上げておきたいと思います」

Q:医療費助成を拡大するということですが、依然として被爆体験者と被爆者という
違いが出てくると思います。被爆体験者の方々は被爆者と認定してもらいたいと求めていますが、これを解決といえるのでしょうか。

武見厚労相
「現実的に、今までの被爆(体験)者といわれた方々、東、西問わず全てを対象として、こうした医療費の助成を行うという抜本的な改革を行うことによって、特に高齢の方が多くいらっしゃいますので、それに速やかに対応する。そういう判断を下したわけでございます」

Q:これを解決というふうに大臣は認識しているのでしょうか。

武見厚労相
「当面における、私どもの合理的な判断がそうなったという経緯でございます」

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