能登半島北部を襲った豪雨災害。雨が小康状態となった22日午後、行方不明者がいるという情報を基に石川県能登町の孤立集落、北河内地区を目指した。
集落へ向かう県道の北河内トンネル入り口は、三角コーンが複数置かれて通行の注意が促されていた。入り口の斜面は土砂崩れの影響か、赤茶色の土がむき出しになっている。車を止めると、トンネルから歩いてくる男性たちの姿が見えた。「この先は進めない。トンネルを出た先はひどいぬかるみだ」
そう教えてくれた男性(47)は、北河内に妻の実家があり、義父と妻、次男の3人が孤立した集落にいるという。3人は集落の寺に避難し、携帯で連絡が取れたが、車の様子を確かめに行ったという義母が行方不明になった。「流されてしまったようだ」と話す。
同町白丸地区在住の男性は、21日も集落まで行こうとしたがどの道も通れず、トンネルの先まで行ってみようと22日に改めて来たそうだ。トンネル入り口に車を止め、偶然居合わせた報道機関の記者とともにトンネルを抜けたが、道路状況が悪く、それ以上進むことは断念したという。
北河内の集落は停電し、水も出ないといい、「飲料水や携帯トイレ、モバイルバッテリーを持ってきたが、そもそも届けられない」とつぶやく。「家族を安全なところに避難させたいが、どうすればいいのか」と途方に暮れていた。
トンネルを離れる男性たちと別れ、真っ暗なトンネルを進んだ。大量の水が流れ込んだようで、ヘッドライトで照らした道路上にはこぶし大の石が散乱している。約800メートルのトンネルを進むと、路面の石が徐々に大きくなっていく。トンネルの外で重機が作業していた影響か、内部は「ぐわーん」「がーん」といった音が常に反響していた。出口付近では、カボチャぐらいの大きな石もいくつか転がっていた。
トンネルを抜けると進行方向左手の斜面から滝のように水が流れ、大量の土砂で道路が埋まっていた。土砂に踏み入ると、見た目以上に深く沈む。30センチ以上沈んだ場所もあった。なんとか土砂の上まで上がると、道路が路盤ごと崩落し、土がむき出しの斜面が現れた。集落の中心部まではここから約2キロ。一人で進むのは危険と判断し、同じ道を引き返した。【柴山雄太】
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