不動産取引をめぐる21億円の横領事件で罪に問われた、不動産会社「プレサンスコーポレーション」の元社長が後の裁判で無罪となった冤罪事件。
この事件で取り調べを担当した検察官に対する刑事裁判で、検察官役を務める「指定弁護士」が決定しました。
指定弁護士に選ばれたのは、いずれも大阪弁護士会に所属する山口昌之弁護士と、高山巌弁護士です。
■横領事件で逮捕・起訴も無罪に 判決で裁判所が取調べについて指摘
不動産会社「プレサンスコーポレーション」の元社長・山岸忍さんは土地取引をめぐり、部下らと共謀して21億円を横領したとして、大阪地検特捜部に逮捕・起訴されましたが、その後の裁判で無罪が確定していました。
判決の中で大阪地裁は、検察官が行った山岸さんの元部下に対する取調べについて、「必要以上に強く責任を感じさせ、真実とは異なる供述に及ぶ強い動機を生じさせかねない」と指摘していました。
■取調べで「大罪人」と発言 「手で机たたく」ことも
さらにこの後、山岸さんが検察に対して起こした国家賠償請求訴訟で、検察官が行った強引な取調べの実態が明らかになりました。
【田渕大輔検事】「なんで、そんなことしたの。それ何か理由があります?それはもう自分の手柄が欲しいあまりですか。そうだとしたらあなたは、プレサンスの評判を貶めた大罪人ですよ」
【田渕大輔検事】「会社が非常な営業損害を受けたとか、株価が下がったとかいうことを受けたとしたら、あなたはその損害を賠償できます?10億、20億じゃすまないですよね。それを背負う覚悟で今、話をしていますか」
さらに、公開されなかった別の日の取り調べでも、関西テレビの取材によると次のような調べが行われていました。
<田渕検事:自分の顔のあたりまで振り上げ、振り下ろし手の平で机を1回たたく>
【田渕検事】「嘘だろ!今のが嘘じゃなかったらいったい何が嘘なんですか!」
【田渕検事】「命かけてるんだよ!検察なめんなよ!命かけてるんだよ、私は!」
■現役の検察官が刑事裁判に
この取り調べで得た元部下の供述によって山岸さんは「共犯」とされ、起訴されました。
無罪となった山岸さんは捜査で違法な取り調べが行われたとして裁判所に罪に問うよう直接求める「付審判請求」を申し立てていました。
そしてことし8月、大阪高等裁判所は、山岸さんの元部下に対する取り調べでの発言は「元部下の恐怖心をあおる脅迫的な内容」などとして「陵虐行為」に当たると判断し、特別公務員暴行陵虐罪に問う刑事裁判を開くことを決定していました。
特捜部の検察官が特別公務員暴行陵虐の罪で刑事裁判にかけられるのは極めて異例です。
■補充捜査を経て公判へ 開始時期は未定
「付審判の決定」によって刑事裁判が開かれる場合、検察官役は弁護士が務めることになっていて、今回2人が選任されました。
公判の開始時期はまだ決まっていません。検察官役の弁護士2人は、今後関係資料を検討し、必要な補充捜査を行って公判に臨むことになります。
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