栃木市が民間からの事業提案を受け、市内の飲食業者に賃貸していた国登録有形文化財「旧足利銀行栃木支店」が市に無断で転貸されていたことが分かった。市は契約違反として今年3月までの退去をこの業者に求めていたが、7月にずれ込んだ。市は4カ月分の遅延違約金20万円を業者に請求し、近く新たな借り手を公募する。
市が26日、市議会に報告した。市によると、建物は1934年の建築。73~2004年は旧栃木市の市教委庁舎として使われ、08年には昭和前期の銀行建築の好例として文化財登録された。
市は施設の有効活用のため、07年度の事業プロボーザル方式で公募、選定した市内の飲食業者と08年4月に10年間の賃貸借契約を締結。満了した18年4月からさらに契約を更新したが、22年12月、借主が別の飲食業者に転貸していることが発覚した。
このため、契約を23年2月で解除し、原状回復などの猶予期間を見込んで今年3月までの退去を求め、23年3月~今年3月の定期借家契約を締結。しかし、借主と転貸先との合意が整わず、明け渡しは7月にずれ込んだという。
建物は映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のロケにも使われ、契約当初は映画名を冠した店名で営業していたが、19年10月に別の店名で営業を始めた。道路を挟んで市庁舎の北側にあるため、市職員も店名などの変更に気付いたが、借主側は「食品衛生法などの届け出もこちらで行い、(系列の)1店舗として営業している」「業務委託している」などと説明していたという。しかし、借主が転貸先から「厨房(ちゅうぼう)使用料」などとして、市に支払う月額5万円の家賃より高額を受け取っていたことが分かり、業務委託ではなく転貸と判断した。
一方、借りていた飲食業者(57)は「業務委託のつもりだったが、市の判断なので仕方がない」と話した。【太田穣】
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