「改革の歩みを止めない。1人で戦っていく」。失職・出直し知事選への出馬を選択した斎藤元彦・兵庫県知事は、26日の記者会見で引き続き県政を担う意思を明確にした。県議会から全会一致で「退場宣告」を受け、厳しい世論にもさらされている。「若い世代への施策を充実させたい」という斎藤氏の「再選への大義」は、有権者に受け入れられるのか。
総務省から大阪府財政課長に出向し、自民党と日本維新の会の推薦を受けた2021年の知事選で初当選した。会見の冒頭では約10分にわたり、3年間の実績を強調。行財政改革で捻出した予算を県立大授業料無償化や県立高校の建て替え、部活動の備品支援などに充てる――と訴える姿は、初心を失っていないようにも見える。
だが、自身の疑惑を告発した県職員を特定し懲戒処分をしたことについては、この日も「最善の判断だった」と正当性を主張。県議会調査特別委員会(百条委)では公益通報者保護制度に反すると指摘され、かつての上司である吉村洋文・大阪府知事も「間違いだったと思うし、そこは認めて謝罪すべきだ」と苦言を呈している。
斎藤氏は「心の中のおごり、慢心を改める」と言うものの、果たして心底からの言葉なのか。告発者が死に追いやられたことについての「道義的責任」を問われると「道義的責任というのは辞職につながる。大きな責任はあるが、今回は辞職はしなかった」と独自の理論でかわした。
県議会各会派は「自身の言動が県職員ら多くの人を傷つけ、傷ついた人が仕事するのにどれだけ支障があったか。結果的に死に至らせるまで傷つけてしまった原因は何だったのか」と知事に問いかけた。そこに正面から向き合わない限り、人心は離れていくばかりではないのか。【中尾卓英】
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