民間の有識者らで作る「人口戦略会議」が24日に公表した、2020年からの30年間に子どもを産む層である20、30代の女性人口が半分以下に減少する「消滅可能性自治体」に千葉県内でも22市町が挙げられた。一方、流山、印西の2市は100年後も持続していると考えられる「自立持続可能性自治体」とされ、明暗が分かれる形になった。
唯一「C―③」評価 深刻な銚子市
銚子市は消滅可能性自治体の中でも、人口減対策と社会減対策が極めて必要という「C―③」に県内で唯一、分類された。人口は1965年の9万1492人をピークに減少傾向が続く。今年3月1日現在の人口は5万4776人。直近5年間は年間1200人ペースで減少が続いており、歯止めがかからない。出生数は85年ごろまでは、年間約1000人だったが、昨年は113人だった。
社会減も顕著。市の担当者によると、働く場所が少ないことなどを理由に、高校や大学卒業を機に離れる若者が多いという。また、地価が安く子育て支援策などが充実していることなどを理由に、利根川の対岸の茨城県神栖市や隣接する旭市への流出も目立つ。
同市企画室の野口昌輝室長は報告書について「市の総合戦略の推計よりも厳しい分析で、深刻に受け止めている」と話す。一方で「厳しく分類されても、特別な財源が来るわけでもない。これまで続けてきた子育てファーストのまちづくりを続けるしかない」と前を向いた。
手を尽くしてきた各自治体
消滅可能性自治体とされた九十九里町企画政策課の羽斗伸一課長は「移住定住促進や子育て支援に取り組んできたが、まだまだ十分ではなかった」と落胆した。町の知名度は高く、全国からサーファーなど海好きの転入者がいる一方、地元の若者の転出が多い。子育て支援や地元産品のブランド化など、町の魅力向上に加え、羽斗課長は「結婚支援策として、出会いの機会創出も後押ししたい」と話した。
山武市総合政策部の担当者も「非常に残念」とこぼした。移住支援金や3世代同居補助金などで人口増を図ってきたが、「自治体間で人口を取り合っても根本的な解決にはつながらない。出生率を伸ばす施策を国で考えていただきたい」と期待した。
また、芝山町の担当者は「厳しい評価は真摯(しんし)に受け止める」としつつも「成田空港の機能強化など明るい材料もある」と話す。空港や周辺で働く人の住宅整備の需要があり、まちづくりの今後に期待できるという。
長柄町の担当者は「(状況を変えるのは)非常に厳しい」とこぼした。給食費無償化や医療費補助、出生や就学の一時金支給など手を尽くしてきたが、最大の問題は公共交通機関が脆弱なことだと説明する。町内に鉄道はなく、バス路線も十分ではない。担当者は「住民の足を何とかすること。そして働く場の誘致。人口減少を少しでも食い止める施策を講じたい」と強調した。
流山・印西 自立持続可能性のヒントは
一方、数少ない自立持続可能性自治体に名を連ねた流山市。近年、子育て世代を中心に人口増が続くが、かつては都心へのアクセスが悪く、2000年代半ばまで人口は微増程度に過ぎなかった。
転機は2005年の「つくばエクスプレス」(TX)開業。市内には3駅が設置され、その周辺で住宅開発が進んだ。開業時、15万人余だった人口は、4年後に16万人を超え、今月1日現在で21万1795人。人口増加数は7年連続で県内1位だ。
しかし、井崎義治市長は「TXだけが人口増の理由ではない」と話す。開業当時、沿線の茨城県つくば市や隣接する柏市などと比べて流山市の知名度は低かった。このため、市は共働きの子育て世帯にターゲットを絞り、「都心から一番近い森のまち」「母になるなら、流山市。父になるなら、流山市。」といったキャッチフレーズを発信してイメージ向上に尽力。同時に子育て環境の充実や住環境整備といった具体的施策も進めたという。
井崎市長は「今後も住み続ける価値の高い街であるとともに、住んでみたいと思う人が増えるよう、ブランディングに注力していきたい」と力を込める。
印西市も自立持続可能性自治体とされた。企画政策課の大浦貴光・企画係長は「全国的に人口減少が続く中、今回の評価は喜ばしい」と歓迎した。同市は中心部を北総線が横断し、ニュータウンが形成されている。「東京と成田空港へのアクセスが良く、近代的な街並みがある一方、豊かな自然もある。住宅価格が高い東京都内などと比べて、20、30代の若いファミリー層が住宅を求めやすい」と分析した。また、グーグルなど世界的企業のデータセンターが進出したことで税収も上がり、「教育、福祉、子育てに力が入れられる」と好循環にあることをアピールした。【柴田智弘、近藤卓資、高橋努】
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