出品された立体的な近江上布の照明器具=KURANOIE提供

 イタリア・ミラノで21日まで6日間開催された世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ」に、国の伝統工芸品で滋賀県の湖東地方特産の麻布「近江上布」を使った照明器具が展示され、好評を博した。出品したのは近江八幡市の若手デザイナーら3人のユニット「KURANOIE」で、制作には愛荘町にある近江上布伝統産業会館の機織り職人も協力。同会館も「近江上布の新たな可能性を開いてくれた」と喜んでいる。

 3人のデザイナーは、近江八幡市在住の白崎公平さん(23)▽大阪府茨木市在住の吉迫亮我さん(23)▽福岡市在住の倉員晃紀さん(23)。いずれも岡山県立大デザイン学部出身で、卒業後それぞれ故郷に帰ってデザインの仕事をする傍ら、協力して新たな作品を生み出そうと昨年4月「KURANOIE」を設立した。ネットで情報をやりとりしつつ、月に1、2回会って創作を続けている。

照明器具をデザインした「KURANOIE」のメンバー、左から白崎公平さん、吉迫亮我さん、倉員晃紀さん=KURANOIE提供

 制作のきっかけは、布に興味を持ちいろいろな布を見て回っていた白崎さんが地元、愛荘町にある近江上布伝統産業会館を訪れたこと。太さが不均一な手よりの麻糸をよこ糸に使い地機(じばた)で織り上げる麻布「生平(きびら)」の繊細な美しさにひかれた白崎さんが、この美しさをよりうまく表現できる製品作りを「KURANOIE」で提案した。布を持って県内各地へ足を運び、風景の中に布を置いて活用方法を探る中、空にかざしたときに生地を透かして目に飛び込んできた光の美しさに感動し、照明作品に決めたという。

 光源を囲むシェード(傘)を立体的にするため、熱を加えると変形できその後も形を維持できる樹脂製繊維を「生平」に織り込んだ新しい布「Omi 3D」を同会館の機織り職人、山口礼子さん(49)とともに開発。それを使った照明器具を制作した。

 ミラノサローネは毎年4月に開催され、6日間に世界各国からデザイナー、家具製作会社、観光客ら約30万人が訪れる。白崎さんらは35歳以下のデザイナーの登竜門となっている「サテリテ」の部門に挑戦。数は非公表だが多数の応募者の中から選ばれ、提供された個別のブースにペンダントライトやデスクライトなど10点を出品した。ブースには連日数百人が訪れ、「非常にスマートな作品」「柔らかで落ち着く光だ」などと好評だったという。

 制作に協力した山口さんも「生平が立体になったのは初めて。きれいなランプになってよかった」と話し、同会館では6月にも作品を会館内に展示する予定という。【西村浩一】

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