名古屋市教育委員会が多数の教員団体から校長職などに推薦する教員名簿とともに金品を受け取っていた問題について考えるシンポジウムが28日、名古屋市内であった。あいち県民教育研究所や名古屋教職員の会などの主催。8月に市の調査検証チームがまとめた最終報告書を基に、望ましい教員人事をテーマに専門家らが意見を交わした。
最終報告書によると、教員人事を担当する市教委教職員課は記録の残る2017~23年度に、教員団体から計1312万円(商品券含む)の金品を受領。推薦名簿や金品授受で昇任人事がゆがめられたことは確認できなかった一方、こうした慣習について報告書は「市民の疑惑や不信を招く不適切な行為」と糾弾している。
報告書について、あいち県民教育研究所の大橋基博所長は「推薦名簿に、どのような活動をした人が登載されやすいか分析されていない。問題の背景への分析、切り込みは極めて不十分」と述べた。
検証チームの調査の過程では愛知教育大出身者が人事で優遇されているとの声が多数寄せられた。報告書では「少なくない市民らが愛知教育大出身者であることと昇任との相関関係を指摘していることは公平性・客観性を求められる人事において大いに課題」とする一方、「愛知教育大出身者であることをもって不当な優遇措置があったとは言えない」と結論付けた。この点について、大橋所長は「『疑わしきは罰せず』ということなのか。学閥の存在が一般の教員に与える影響は分析していない」と批判した。
名古屋造形大の首藤隆介教授は、推薦名簿の背景について「大規模で広範囲に及ぶ教員人事の難しさがある」と指摘。その上で再発防止策として「教職員人事を含む教育委員会業務を区に分割し、顔が見える区域に縮小すべき」と提言した。
参加した現役の教員からは「市民感覚との乖離(かいり)、閉鎖性や同調圧力など教育現場が抱える問題を解決するには、全容解明してほしい」など再検証を求める声が上がった。【真貝恒平】
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