1966年6月に静岡県清水市(現静岡市)で起きた一家4人殺害事件のやり直しの裁判(再審)で、静岡地裁の無罪判決(求刑・死刑)を受けた袴田巌さん(88)が29日、県弁護士会が開いた報告会に出席した。支援者ら約100人の拍手に囲まれ「無罪勝利が実りました。待ちきれない言葉でありました」と語った。
足の具合が悪い袴田さんは車いすで会場を訪れ、支援者に支えられながら舞台に上った。マイクを手にゆっくりとしたペースで「完全に全部勝ったということで、今日はめでたいということで、皆さんの前に出てきた」などと話した。最後に脇に立つ姉秀子さん(91)から「ありがとうって言いな」と促されると、柔和な表情で「ありがとうございました」と感謝を述べた。
続いて登壇した弁護団事務局長の小川秀世弁護士は、長期にわたる身柄拘束の影響で、意思疎通が難しくなっている袴田さんに「無罪が伝わっていないのではないか」と心配していたと明かしたが、「通じていて本当にうれしかった。巌さんには、まだまだ頑張ってほしい」と声を震わせた。
証拠の捏造(ねつぞう)が認められ、無罪の決め手となったことについても説明。「無罪が出ることは確信していた」と話しつつも、再審最大の争点となり、検察側が犯行時の着衣とした「5点の衣類」について「(判決が捜査機関による捏造の)可能性ではなく、捏造と言い切ったことには、とても驚かされた」などと振り返った。【丘絢太】
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