埼玉県熊谷市で2009年9月に小学4年の小関孝徳さん(当時10歳)がひき逃げされ死亡した事件は、30日で発生から未解決のまま15年を迎えた。母の代里子さんはこの日、ラジオ番組に出演して情報提供を訴え、市内で事件の詳細などが書かれたチラシを配り歩いた。取材に応じた代里子さんは「犯人が検挙され、事件の真相が分かるその日まで決して諦めない」と声を振り絞った。【加藤佑輔】
孝徳さんは09年9月30日夕、自転車で帰宅途中に熊谷市内の市道で車にひかれ、亡くなった。逃走車両の遺留物は少なく、捜査は難航。当時はドライブレコーダーが現在ほど普及しておらず、目撃情報も乏しかった。
代里子さんは30日、熊谷・行田両市を放送エリアとするFMクマガヤに出演。「どんなささいな情報でも構いませんので、ご協力をお願いします。事件を知らない方も多くいると思うので、SNS(ネット交流サービス)で拡散していただけたら」と訴えた。その後、県警警察官ら27人と一緒に、事件現場に近い八木橋百貨店(熊谷市仲町)周辺で、情報提供を求めるチラシを配った。
代里子さんは事件直後から、孝徳さんの同級生の保護者の協力も得て現場付近を通る車のナンバーを記録し統計を取ってきた。書き取ったナンバーは約10万台。熊谷の車が一番多く、他県では群馬ナンバーも多かった。現場はJR熊谷駅方面に向かう抜け道となる生活道路で、「犯人が何度も通った道だったのでは」と考えている。
自動車運転過失致死罪(09年当時の罪名)の時効が迫った19年、街頭やインターネット上で死亡ひき逃げ事件の時効撤廃を求める署名集めを始めた。県警は時効成立まで2週間を切った同年9月18日、容疑を危険運転致死(同)に切り替え、時効は10年延長された。
署名活動は現在も続き、23年11月には約11万筆の署名を提出した。代里子さんは「殺人事件の時効は2010年に撤廃された。遺族にとって死亡ひき逃げ事件は殺人と同じだ」と強調する。その上で、「救護措置を取っていれば救われた命は多くあるはず。人を死なせていながら、時効まで逃げ切ったら罪に問われない社会でいいのか」と訴える。
情報提供を求め開設したブログやSNSには、これまでに全国から500件以上の情報が寄せられた。21年には、群馬県内の飲食店で「十数年前に人をひいて怖くなり、そのまま逃げて車は廃車にした。だから、捕まることはない」と話している人物を目撃したとの情報もあり、埼玉、群馬両県警に共有した。
心の支えは、ブログなどに寄せられる応援メッセージや活動を通じて出会う人々との交流だという。19年ごろから毎月欠かさず事件現場で献花をしてくれる都内の女性、「22歳になった孝徳くんとお母様です」というメッセージを添えて送られてきたスーツ姿の孝徳さんと代里子さんのイラスト……。「他人のためにここまでしてくれる人がいるなんて」と涙がこみ上げる。
逃走した犯人の心境を考えることがある。人は秘密を抱えて生きていくのは難しく、きっと身近な人に事件について話している――と。代里子さんは「身近にいる人が犯人の異変に気付き、情報を提供してほしい。犯人にも大切な家族がいるなら、家族に付き添ってもらって自首し真実を話してもらいたい」と願っている。
事件に関する情報提供は熊谷署(048・526・0110)や、代里子さんのブログ(https://ameblo.jp/kosekitakanori/)へ。
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