北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさん(行方不明時13歳)が5日に60歳の誕生日を迎えるのを前に、母早紀江さん(88)が3日、川崎市内で報道陣の取材に応じた。毎年ケーキを買って誕生日を祝うが、「何回やっても帰ってこない。あと自分が何年生きられるか分からない。むなしさを感じる」と胸中を語った。
1964年、東京オリンピックの開幕が5日後に迫る中、めぐみさんは生まれた。体重は3260グラム。初めて抱いた時は「思った以上に重かった」という。その時の感触は今も忘れずにいる。
めぐみさんが拉致されて以降、一緒に誕生日を迎えられていない。だが毎年滋さん(2020年に87歳で死去)がケーキを買ってきて、次の年こそはめぐみさんと祝おうと誓い合った。
早紀江さんはこの日、めぐみさんが小学生の時にプレゼントしてくれた小さな陶器のつぼを持参した。還暦を迎える愛娘の姿は「あまりにも残酷なことばかり続いて暮らしているので、想像がつかない」という。
毎日めぐみさんの写真に「まだ連れて帰ってあげられないんだよね」と話しかける。「帰国したら黙って抱きしめてあげたい。帰ってきてくれさえすればいい」と目を潤ませた。
1日には石破茂首相が就任した。石破首相は総裁選で拉致問題の解決に向け、東京と平壌の連絡事務所設置を政策として掲げた。
一方で被害者家族らは北朝鮮の時間稼ぎの材料になるとして強く反対している。早紀江さんも改めて懸念を示し、「日朝のトップ同士が目を見て話すことが一番だ」と日朝首脳会談の早期実現を求めた。
そのうえで「みんなが帰ってこられるように政府には頑張ってやっていただきたい」と話し、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を強く訴えた。【木下翔太郎】
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