絵本「ぼくのいろ きみのいろ」の制作に取り組む香川県立観音寺第一高校の3年生5人=同校提供

 「自分らしさを否定され、孤独に苦しむ子どもを救いたい」。そんな思いを込め、5人の高校生がLGBTQといった性的少数者の子どもを主人公にした絵本「ぼくのいろ きみのいろ」の制作に取り組んでいる。

 5人は香川県立観音寺第一高校(観音寺市)の3年生。同校の1年生は毎年、授業の一環で当事者団体「あしたプロジェクト」(高松市、谷昂頼代表)による講演会を受講する。保育士を目指している生徒の一人が、2年前に受講した際「幼い頃から性に悩む子どもがいるのか」と驚き、「幼少期から正しい知識を身につけてほしい」と2年生になって仲間とともに絵本制作を始めた。

絵本「ぼくのいろ きみのいろ」の一場面=香川県立観音寺第一高校提供

 主人公は、かわいいものやピンク色が大好きな4歳の男の子「しのくん」。「男の子らしくない」と友達から指摘されたことをきっかけに、“普通の男の子”を目指すが、心が壊れてしまう。そんなしのくんが本当の自分らしさを見つける物語だ。タイトルには「一度きりの人生を、自分の大好きな色でいっぱいにしてほしい」という願いを込めた。

 5人に協力している「あしたプロジェクト」は、製本に向けてクラウドファンディング(CF)で募金への協力を呼びかけている。同プロジェクトによると、リーダーを務める山下千乃さん(3年)は「絵本を通して周りの大人にも、多様な生き方があることを知ってもらい、否定せずに受け入れることの大切さを分かってほしい」と制作に励んでいるという。

 あしたプロジェクトはLGBTQを含めた全ての人が自分らしく生き生きと過ごせる地域づくりを目指し、各地で講演会を開催したり、啓発動画を制作したりしている。メールやSNS(ネット交流サービス)で当事者からの相談にも応じているが、年間の相談60件程度のうち3~4割は10代からだという。

 谷さんは今回の絵本について「性に関して子どもが悲痛な声を上げても、身近な大人は誰も聞き入れてくれない。でも絵本があれば大人と一緒に読める。『自分を大事にする』ということが伝わるのではないか」と期待する。製本した絵本は、香川県内の全小学校に無料配布し、高松市内の子ども食堂や小児科の待合室などにも置いてもらいたい考えだ。また、読み聞かせボランティアを募って広めていくことも計画している。

 クラウドファンディングは「たかまつ讃岐てらす財団」の公式サイト(https://congrant.com/project/sanuki-tellus/12906)から。11月11日まで募っている。【佐々木雅彦】

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