「政治を語る」を「日常」に――。
そう掲げてステージやセミナーなどでマイクを握る。「政治アイドル」として活動する町田彩夏さん(29)は、歌って踊る従来のアイドルではない。
「選挙はお祭りと表現されますが、その時だけSNS(ネット交流サービス)を更新する政治家もいます。チェックすべきは、終わった選挙の翌日からこれまでの行動。政治家に『国民はちょろい』と思わせてはいけません」
9月、立憲民主党代表選、自民党総裁選で続けざまにトップが交代した。その後、たちどころに衆院が解散され、突入した総選挙(10月27日投開票)について、キリッとした口調で切り込んだ。
「難しい選択」だった自民総裁選
千葉・市川高から慶応大法学部に進み、ジェンダー社会学をお茶の水女子大大学院修士課程で修めた町田さん。自民党総裁選で、日本初の女性首相まであと一歩とした高市早苗前経済安全保障担当相と石破茂氏との決選投票を「私にとってはどちらも推すのは難しい候補でした」と振り返る。
理由を尋ねると、「石破さんはインターネットの世界では『党内左翼』と呼ばれることもありますが、元々『国防』を掲げる保守の政治家。高市さんは男性的な主義主張の持ち主で、選択的夫婦別姓や外国人材の受け入れについて積極的ではありませんでした」。
夫婦別姓、思い出す「卒業記念品」
選択的夫婦別姓は総裁選の争点の一つだった。石破氏は当初、報道番組で「やらない理由が分からない」と賛意を表明していたが、首相就任後に慎重姿勢に転じた。日本記者クラブ主催の党首討論会では、党内議論に「結論を出す」と述べたものの時期は明示していない。
町田さんは「議論するといえばプラスのイメージだけど、期待を持たせておいて30年議論している。賛成できないなら、勇気を持ってやらないと言えばいいのに」と批判する。
思い起こすのは、高校の卒業記念品の「はんこ」だという。彫る文字には選択肢があった。「姓」か「名」か両方か。
「結婚で姓が変わる可能性があるからという配慮だったんでしょうね」。「名」を選ぶ男子生徒はいなかった。
女子生徒の中で「どうする?」と話題になったが、「結婚するなら10年後。その頃には夫婦別姓が実現しているはず」と踏んで「町田」でいく、と決めた。
「別姓の賛成理由は人それぞれでいい。私は結婚後の姓について他人に強要されるものではないと思っています」
女の子も政治を語っていい
「政治アイドル」として活動を始めるきっかけとなったのは2015年のアイドルオーディションだった。オーディションのキャッチコピーでは、「誰かの明日を元気にする存在」がアイドルだった。
町田さんは「女の子だって自分の政治的見解や意見をしゃべっていい」と次世代にメッセージを送る。「論理的にハキハキ話す私の特技を生かして、女性たちを勇気づけたい」と話す。
さて、衆院選の投開票は27日。「選挙では、立候補も投票も私たち有権者の意見表明。政治家たちに『トップを代えたらなんとかなっちゃった』と思われないようにしなきゃ」【山崎明子】
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