国が2018〜22年度に犯罪被害者らに支給した「犯罪被害者等給付金」について会計検査院が調べたところ、全額の48億7300万円について警察庁が加害者側から回収するための債権管理を怠り、一度も請求していなかったことが18日分かった。
9億円超は同庁が請求を放置したため時効の状態になっていた。検査院はこのうち少なくとも2億3700万円は加害者側に支払い能力があったと指摘した。
国は殺人などの被害者遺族のほか、重傷や障害を負った被害者を対象に生活再建などを後押しするため、給付金を支給する。所管する警察庁が給付額を限度に後から加害者側に請求する。
検査院は22年度までの5年間に支給された計1838件、計48億7300万円で警察庁が請求できる債権を対象に調べた。すべてで債権金額などが管理簿に記録されず、支払い請求していなかった。
加害者が心神喪失で不起訴になった場合などは国の請求はできないが、こうしたケースは一部とみられる。
本来は警察庁内の徴収担当者が債務者である加害者の名前や住所、金額などを債権管理簿に記載する。徴収担当者は加害者に金額や期限を告知し、支払いを請求する。
しかし警察庁では給付金の支給に伴い、債権が発生したことを同庁内の徴収担当者に知らせる仕組みがなかったため、管理簿への記録や請求手続きがされていなかった。
債権は民法の規定により、犯罪被害者などが損害や加害者を知ったときから5年間行使しなければ時効で消滅する。
検査院によると、警察庁が債権金額などを加害者に告知していなかったため、検査対象のうち少なくとも400件超の請求権が3月末時点で時効の状態になっていた。債権額は計9億5800万円に上る。少なくとも計78件の2億3700万円の債権は加害者側に資力があったと指摘した。
例えば暴行され障害を負った被害者が22年度に704万円の給付金を受けたケースでは、加害者に約1500万円の貯蓄があり、負債もなかったにもかかわらず、警察庁は支払い請求していなかった。
犯罪被害者給付金の支給は毎年300〜400件ほどあり、支給額は増加傾向にある。警察庁は6月に関連法令を改正し、計算式を変更。最低額が320万円から1000万円超に引き上げられた。今後も支給額の増加が見込まれる。
検査院は警察庁に債権金額の確認や管理体制を整えることを要求した。同庁は「指摘されたことを踏まえ、債権管理を適切に行っていく」としている。
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