火山活動の活発化などのため、激しく噴煙が上がる御嶽山。右上は自衛隊のヘリコプター(2014年9月30日午前、長野県王滝村)

58人が死亡、5人が行方不明となった2014年の御嶽山(岐阜、長野県)の噴火災害をめぐり、遺族らが国などに計約3億7600万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が21日、東京高裁であった。筒井健夫裁判長は噴火警戒レベルを据え置いた国側の対応が「著しく合理性を欠くとは言えない」と判断し、原告側の控訴を棄却した。

一審・長野地裁松本支部判決は原告側の請求を退けたが、国側の判断過程については「違法」と指摘していた。

一審判決などによると、噴火は14年9月27日正午前に発生。同月10日ごろから火山性地震が増加していたが、気象庁は5段階ある噴火警戒レベルを最低の「レベル1」で維持した。犠牲者の遺族30人と負傷者2人が17年以降に国と長野県を提訴した。

訴訟では、警戒レベルを引き上げなかった国側の対応の是非が最大の争点となった。

原告側は14年9月10日に52回、翌11日に85回の火山性地震が観測されていたと強調。1日50回以上の火山性地震の観測は警戒レベルを引き上げる際の基準の一つとされるのに、気象庁は対応を怠ったなどと訴えた。

これに対して国側は、引き上げは火山性地震の回数以外の要素も考慮して総合的に判断するもので、同庁の判断が著しく合理性を欠くとは言えないと反論した。

22年7月の一審判決は火山性地震の発生状況なども踏まえれば、気象庁は警戒レベルの引き上げをより慎重に検討すべき注意義務を負っていたと認定した。短時間の検討で警戒レベルを据え置いた同庁の判断を「著しく合理性に欠け違法だ」と断じた。

一方で仮にレベルを引き上げていたとしても、火口周辺への立ち入り規制などの措置が確実に間に合ったとまでは言えないとも言及。死亡や負傷との因果関係は認められないと結論付けた。請求棄却を不服として、原告側が控訴していた。

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