長崎市滑石1の西本尚子さんが80歳を迎える12月に運転免許を返納し、25年間乗ってきた愛車のスポーツカー「RX―7」を手放すと決めた。車は製造元のマツダ(広島県府中町)が譲り受け、イベントなどで活用する。西本さんは「RX―7は人生を共にしてきた相棒であり友人。これからも多くの人に愛されてほしい」と話す。【川島一起】
製造元・マツダ 「車の魅力伝えたい」
西本さんは事務員をしていた55歳の時、車を買い替えようと思い、2シーター(2座席の車)を探して10店以上を巡ったが、気に入った車種はなかった。たまたま次男が録画していたレースのテレビアニメに登場したRX―7を見て「ボディーラインがきれい」と一目ぼれ。すぐにシルバーの新車を約300万円で購入した。
近所のスーパーへの買い物などで日常的に使い、25年間の走行距離は約7万5000キロ。今も走りは滑らかでロータリーエンジンのここちよい音が運転席に響く。生産終了から20年以上たった車種で街中で見かけることは少なく、信号待ちで並んだ大型バイクの若者が「いいね」と合図を送ってくれたことも最近あった。
愛車を手放す覚悟を決めたのは2022年12月の78歳の誕生日。運転への不安はなかったが「免許返納を先延ばしにして後悔したくない」と考え、80歳での返納を決断した。
西本さんは「できれば女性に大事に乗ってもらいたい」と考えて愛車の譲り先を探し、テレビ番組などで取り上げられた。それを知ったマツダ本社の広報チームが「(もし譲ってもらえれば)『クルマの持つ力でいつまでも元気にいきいきと生きる』という物語で、多くの方々に元気を与えられると思っています」と電子メールを送った。
西本さんには譲渡を希望する約400通のメールが届いていたが、「これからもたくさんの人に見てもらえる。最高の結末だ」と喜び、マツダへの譲渡を決めた。車は同社が買い取った後、専門のメカニックがメンテナンスをして、車の魅力を伝える「広報車」としてさまざまなイベントで活用する。
マツダ国内商品マーケティング部国内広報チームの田中秀昭さんは「RX―7は手に入れることが難しい車で、女性オーナーは全国的にも珍しい。西本さんのRX―7を通して、車の楽しさを伝えていきたい」と話した。
RX―7
マツダが独自技術で培った高出力、低騒音、低振動が特徴の「ロータリーエンジン」で動くスポーツカー。1978~2002年に約81万台生産された。米映画「ワイルドスピード」に登場するなど世界的にファンが多く、人気レース漫画でアニメ化された「頭文字(イニシャル)D」には、主人公のライバルの車として登場する。
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