混雑する羽田空港の国際線出発ロビー(4月)

インバウンド(訪日外国人)向けの免税制度が悪用されている実態が会計検査院の調査であらわになった。2022年度だけでも免税の対象とはならない9人が計33億円分を購入し、消費税など約3億4千万円の納付を逃れていた。購入額が13億円を超えた人もいた。政府は仕組みの見直しを急ぐが、現行制度下での徴収漏れ対策も急務になる。

消費税法は訪日客を含め、非居住者が購入した土産物や日用品の免税を認めている。税関は出国時に免税品を所持しているか検査し、購入した品物が手元にないなど国外への持ち出しが確認できない場合、免税制度の対象外として消費税を徴収する。

検査院が2022〜23年度に実施された検査のうち、免税品の購入額ベースで計約647億円分を抽出して調べた。このうち22年度に東京税関の羽田・成田税関支署で持ち出しが確認できなかった計9人に対し、消費税の納付を求める手続きがとられていなかった。

搭乗手続きが終わる間際に空港のカウンターに訪れたことなどから「(納付を求める)通知書を作成する時間がなかった」のが理由だという。通知は口頭でも可能だが、税関職員のルール誤認などが原因で口頭での通知もしていなかった。

9人が購入した免税品は高級時計やブランドバッグなど総額約33億9900万円。納付すべきだった消費税額は計約3億4千万円に上る。税務当局の関係者は「高額な品物を購入しながら手元にないのは国内で転売したのだろう」とみる。

出国時に納付を求める通知をした場合、手持ち資金がなくその場で徴収できなくても滞納者として税関のシステムに登録され、再入国時に追跡できる。登録できなかった場合は将来的な徴収は難しい。

訪日客数が増加する一方、購入した免税品を国内で転売する不正は後を絶たない。転売時に消費税分を利ざやとして得る目的があるとみられている。検査院の指摘を受けて財務省は8月、口頭を含め納付を求める通知を徹底するよう税関に周知した。

政府は抜本的な対策として、商品購入時に消費税を納付させ、出国時に国外への持ち出しを確認してから払い戻すリファンド型の導入を検討している。新制度の移行時期は免税店のシステム改修などにかかる時間を考慮して決める。

移行までは税関での徴収強化に加え、要件を満たさない訪日客に免税品を売らないように販売側のチェックも重要になる。国税当局は十分な本人確認をしないまま免税販売するなどした百貨店やドラッグストアへの税務調査を厳格化している。

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