公正取引委員会=東京都千代田区で2019年9月2日、松本尚也撮影

 Vチューバー(バーチャルユーチューバー)事務所大手の「ホロライブプロダクション」を運営する動画制作・配信会社「カバー」(東京都港区)について、公正取引委員会は25日、下請け法違反を認定し、是正するよう勧告した。243回にわたって下請け業者に作業のやり直しを無償でさせており、同法の禁止行為「不当なやり直し」に当たると判断した。

 Vチューバーは、アニメキャラクターのようなアバター(分身)を用いて動画配信などの活動をする「タレント」。業界大手のホロライブプロダクションには85人(3月末時点)が所属し、公式サイトによると、動画サイト「ユーチューブ」の総チャンネル登録者数は8841万人(同)。運営会社のカバーは東証プライム上場企業で、グッズ販売や動画配信などによる3月期の売り上げは約301億円に上る。

 公取委によると、カバーは2022年4月~23年12月、キャラクターを2D(平面)や3D(立体)にコンピューターグラフィックス(CG)処理し、画面上で動くように加工する「モデリング」を、フリーランス(個人事業主)を含む23業者に発注。完成品が納入された後も繰り返し、無償で修正させていた。修正内容は動作のなめらかさや髪の動き方などで、発注時の仕様書からは読み取れない部分が多かったという。

 動画制作・配信事業を巡り、下請け法違反による公取委の勧告は今回が初めて。公取委はカバーに対し、再発防止とともに下請け業者の被害額の確定とその支払いを求めた。やり直しの完了まで代金を支払わなかったのは、同法が禁じる「支払い遅延」の恐れがあったとして指導も行った。

 公取委の担当者は「今回の下請けは8割がフリーランス。クリエーティブな業務に多い『やり直し』を前提とする契約も結ばれていなかった。持続可能な業界にするためにも、やりがいを搾取するような行為はすべきでない」と指摘。フリーランスの保護を目的に11月施行される新法とも「密接に関わる事件だ」としている。【渡辺暢】

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