1986年に福井市で中学3年の女子生徒が殺害された事件で、殺人罪で懲役7年が確定、服役した前川彰司さん(59)の第2次再審請求で、検察側は28日、再審開始を認めた名古屋高裁金沢支部決定に対し、異議を申し立てないと発表した。裁判をやり直す再審開始が確定した。
犯人を直接指し示す証拠はなく、確定判決は知人ら複数の関係者の供述を有罪の根拠としていた。23日の支部決定は、関係者が自己の利益のためうそを言った可能性があるなどと供述の信用性を否定した。
捜査に行き詰まっていた警察が供述を誘導した疑いや、検察が関係者供述に大きな事実誤認があることを知りながら、公判で有罪立証を続けたことも指摘し、前川さんが犯人とは認められないと結論づけた。
第2次請求で、検察側は警察の捜査報告書など新たに287点の証拠を開示。決定の決め手となった。
再審開始の確定が明らかになるのは、66年の静岡県一家4人殺害事件で死刑が確定し、昨年3月に開始が決まった袴田巌さん(88)以来。袴田さんは9月、再審無罪判決を受け確定した。
前川さんは一貫して無実を訴え、90年に一審福井地裁で無罪判決を受けたが、二審の高裁金沢支部で有罪となり、確定。第1次再審請求で、高裁支部は2011年に再審開始を認めたが、検察側が異議を申し立て、名古屋高裁で取り消された。〔共同〕
▼福井中3殺害事件 1986年3月19日夜、福井市の市営団地で、住人の中学3年の女子生徒(当時15)が殺害された。捜査が難航し、県警は約1年後、殺人容疑で前川彰司さんを逮捕。90年の福井地裁判決は無罪だったが、名古屋高裁金沢支部は95年、逆転有罪とし、心神耗弱を認め懲役7年の判決を言い渡した。最高裁も支持し確定した。前川さんは満期出所後の2004年、第1次再審請求した。高裁金沢支部は11年、再審開始を認めたが、検察側が異議を申し立て、名古屋高裁が13年に取り消した。22年に第2次請求した。日弁連が前川さんを支援している。〔共同〕
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