2013〜15年に行われた生活保護費の基準額引き下げは違法として、兵庫県の受給者が自治体による減額処分の取り消しや国に賠償を求めた訴訟の控訴審判決が26日、大阪高裁であった。森崎英二裁判長は「国に裁量権の逸脱や乱用は認められない」とした一審・神戸地裁判決を支持し、受給者側の控訴を棄却した。受給者側は上告する方針。
全国29地裁で起こされている同種訴訟で、控訴審判決は4件目。国の処分を適法とする判断は23年4月に言い渡された別の大阪高裁判決以降で3件目となった。生活保護基準の引き下げを巡り、厚生労働相による裁量権の逸脱や乱用がなかったかが争点だった。
森崎裁判長は判決理由でこの点につき「高度な専門技術的な考察と政策的判断が必要」と厚労相の裁量を認めた上で「判断の過程や手続きに誤りはない」と判示した。
国は13〜15年に物価下落率を踏まえる「デフレ調整」と生活保護受給世帯と一般の低所得者世帯の生活費を比べて見直す「ゆがみ調整」を反映し、生活保護費の基準額を改定した。その結果、生活保護費のうち、食費や光熱費などに充てる「生活扶助」が改定前と比べて平均6.5%引き下げられ、計約670億円が削減された。
判決後に大阪市内で記者会見した弁護団は「到底受け入れられない」と述べた一方、神戸市と尼崎市は「今後も生活保護の適正実施につとめていく」とコメントした。
21年12月の一審・神戸地裁判決は「引き下げに国の裁量権の逸脱や乱用があったとは認められない」として請求を棄却。原告側が控訴していた。
これまでに出た26件の一審判決のうち、15件で処分取り消しが認められた。いずれの訴訟も国や原告側が控訴。各地の高裁の判断が注目される。
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