警視庁は自転車利用者に対して注意を呼びかけた(10月24日、東京都大田区)

自転車走行中の携帯電話使用(ながら運転)や酒気帯び運転に罰則を盛り込んだ改正道路交通法が1日、施行された。若い世代を中心にスマートフォンのながら運転が絡む事故が増えており、罰則強化により抑止を図る。自転車の交通違反には2026年から反則金制度も適用される。ルールが大きく変わり、周知が課題になる。

「11月から酒気帯び運転やながら運転の罰則が強化されます。ながらスマホはやってしまいがちですので注意してください」

10月下旬、東京都大田区の駅前で警察官が新たな交通ルールを巡るチラシを配り、順守を呼びかけた。警視庁は飲食店や携帯電話販売店、自転車販売店などにチラシの配布やポスターの設置協力を依頼し、浸透を急いでいる。

ながら運転は走行中にスマホなどで通話したり、画面を注視したりする行為を指す。これまでは各都道府県の公安委員会規則で禁止され、違反した場合は5万円以下の罰金だった。1日施行の改正道交法で全国で統一した罰則を設けた。

改正法はながら運転の罰則を6月以下の懲役または10万円以下の罰金と規定した。ハンドルに取り付けたスマホを注視した場合も違反になる。事故を起こすなど実際に危険を生じさせた場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金と罰則が重くなる。

規制強化の背景には事故増加がある。警察庁によると2018〜22年の5年間にあったながら運転の事故は計454件で、13〜17年(計295件)の1.5倍。携帯電話使用中の死亡・重傷事故は24年1〜6月に18件発生し、統計がある07年以降の同期比で最多だった。

担当者は「動画やゲームアプリなどスマホ向けのコンテンツが充実していることも影響しているのではないか」とみる。

飲酒運転に関する規制も強化した。呼気1リットル中のアルコールが0.15ミリグラム以上の酒気帯び運転を罰則対象に追加。罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金とし、飲酒運転をする恐れがある人に酒や自転車を提供した場合にも罰則を科す。

これまではアルコールの影響で正常に運転できない「酒酔い運転」のみ罰則対象だった。過去10年間の事故を分析した結果、自転車事故のうち酒気帯び状態の死亡・重傷事故率は29.5%で、飲酒無し(15.9%)の約1.9倍と判明。重大事故を防ぐ狙いがある。

自転車のながら運転と酒気帯びは、危険な交通違反を繰り返す運転者に安全講習を義務付ける「自転車運転者講習制度」の対象にもなる。一定の違反を重ねた場合に都道府県の公安委員会から受講命令が出され、応じなければ5万円以下の罰金が科される。

全国的に交通事故が減少傾向にあるなか、自転車が絡む事故は増えている。2023年は前年比約3%増の7万2339件と4年連続で増えた。交通事故全体に占める割合は23.5%で、14年(19.0%)と比べ4.5ポイント増だった。

自転車を巡っては、定型的な交通違反について一定期間内に反則金を納付すれば刑事罰を科さない「交通反則通告制度」の対象に26年にも加わる。信号無視などに適用され、自転車の違反行為の多くは5千〜6千円の反則金が設定されるとみられる。

自転車は免許不要のため交通ルールを学ぶ機会が少なく、世代に応じた周知の取り組みが重要になる。警察庁は自転車や教育の関連団体を交え、安全教育のガイドラインを25年度内にまとめる。

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