娘の写真を抱いて風疹対策を呼びかける可児佳代さん(10月、東京都内)=共同

風疹の流行を防ぐため、過去に予防接種を受ける機会がなかった45〜62歳の男性に対して自治体が配布してきた無料の接種と抗体検査のクーポン利用率が、5月時点で約3割にとどまり、目標の半分程度だったことが3日、厚生労働省への取材で分かった。クーポンは原則来年2月に期限を迎えるため、厚労省は対象者に利用を呼びかけている。

風疹は飛沫感染し、発疹や発熱の症状が出る。大人が感染すると無症状の場合も多い。だが、妊婦が感染すると赤ちゃんが難聴や心臓病などの先天性風疹症候群(CRS)になる恐れがある。

風疹やCRSの発生をなくすためには、ワクチン接種によって感染を広がりにくくすることが重要とされる。厚労省は抗体保有率が他の世代と比べて特に低い45〜62歳の男性をターゲットとして、抗体保有率を90%以上にする目標を設定した。

2019年に対象者にクーポンを配布し、医療機関の抗体検査で免疫がないことが確認されれば、無料でワクチンを接種できる仕組みを作った。目標検査人数は約920万人。通常は検査と接種で約1万5千円かかる。

しかし新型コロナウイルス流行で検査が進まず、無料クーポンが使える期間を延長しても、今年5月までの実施者は対象者の31.5%に当たる約484万人だった。抗体保有率は22年度時点で86.3%。

神奈川県衛生研究所の多屋馨子所長は「風疹の流行は突然やってくるので事前の備えが必要だ」と話す。

「風疹をなくそうの会」共同代表の岐阜市の可児佳代さんは、妊娠中に風疹にかかり、CRSで心臓病や難聴、白内障を抱えた18歳の娘を亡くした。「子育て世代ではないので関係ないと思わず、無料で受けられる最後のチャンスなので検査と接種を検討してほしい」と訴えた。〔共同〕

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