物価高騰対策の一環として電気・ガス料金の値引きや節電の促進を支援する国の2事業を巡り、広告大手「博報堂」が資源エネルギー庁から総額372億円で受託した事務局業務の大部分を子会社に委託し、さらに別の会社に再委託や再々委託されていたことが会計検査院の調査で判明した。
博報堂側は委託を繰り返した理由を明確に示しておらず、検査院はエネ庁に対し「多くの企業が関われば(事業を適切に実施しているか)目も届きにくく、費用もかさむ。委託や再委託の妥当性をしっかり検討すべきだった」と指摘した。
検査院によると、博報堂は「電気・ガス価格激変緩和対策事業」について、2023年分の事務局業務を319億円で受託。その後、コールセンターの審査管理やポスターの製作など業務の大部分を、100%子会社「博報堂プロダクツ」に210億円で委託していた。広報業務など別の7社への委託分を合わせた委託費は計227億円、委託費率は71・2%に上った。
エネ庁が作成した事務局の募集要項は業務の「丸投げ」を防ぐため、委託費率が50%を超える場合に「委託理由書」の提出を求めている。博報堂はプロダクツへの委託について「スピード感があり情報整理能力が高い」などと曖昧な説明しかしておらず、委託先や委託料を決める際、見積もり合わせなど他社との比較検討も行っていなかった。
一方、プロダクツは博報堂から委託された業務を160億円で別のプロモーション会社に再委託していた。同様の構図は「電気利用効率化促進対策事業」でも確認され、博報堂がエネ庁から52億円で受託した事務局業務をプロダクツに37億円で委託するなど、委託が繰り返されていた。
博報堂は「検査院の指摘内容を把握できていないため、コメントできない」としている。【渡辺暢】
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