新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行に備え医療体制を確保するための国の補助事業で、東京都内のマンションの一室にある診療所が「室内に14の診察室を整備した」などと申告し、6億1603万円の補助金を交付されていた。会計検査院は虚偽申告の可能性があるとして、5億6698万円分を「不当」と指摘。返還させるよう厚生労働省に求めた。
厚労省は2020年10月~21年3月、発熱患者を個別スペースで受け入れられる体制を整備した医療機関に、整備費用を補助する事業を実施。これを巡り、訪問診療などを手掛ける東京都中野区の診療所が「診察室を14室整備」「全室を土日祝日含めて休みなく開設」などと厚労省に申告し、補助金を交付された。
検査院によると、診療所は申告内容について、広さ約62平方メートルのマンション室内をパーティションで区切ってそれぞれ診察室としたほか、洗濯機や冷蔵庫などのスペース、トイレも診察室として使っていたと説明。診察室と同数の勤務医がいることも補助金の交付条件とされるが、検査院が確認できたのは2人だけだった。さらに電子カルテの記録から、診察室を「開設」していたはずの時間帯に勤務医が訪問診療で外出していたことも分かった。
厚労省は「2万2000件の申告をインフルエンザ流行期までの短期間で処理し、医療機関の事務負担も軽減するため書類も簡素化していた。最善を尽くしたと考えているが、結果として『実績審査が不十分』との指摘は真摯(しんし)に受け止める」とコメント。検査院の指摘を受け、診療所に補助金を返還させたという。
検査院は今回、新型コロナ対策の医療支援9事業を検査。補助金の「不当」交付が38件(計21億9399万円)確認された。【渡辺暢】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。