養子縁組前に生まれた子どもは、死去した親の相続権を引き継げるか――。そんな点が争われた訴訟の上告審判決が12日、最高裁第3小法廷(渡辺恵理子裁判長)であった。同小法廷は「引き継げる」とした二審・東京高裁判決を破棄し、「引き継げない」とする初判断を示した。原告側の逆転敗訴が確定した。

民法は相続予定の人が亡くなった場合、子どもらが相続権を引き継げる「代襲相続」を定める。養子縁組前の子どもは原則として対象外とされるが、一部で曖昧さが残っていた。今回の判決は解釈が割れていたケースで相続の範囲が広がりすぎないよう厳格に判断した形だ。

原告は神奈川県に住む30代と40代の男女。原告の母親は2人を生んだ後に自身のおばの養子となり、おばの実子である男性との関係は「いとこ」から「兄妹」になった。その後、母親は2002年に死去し、男性も19年に亡くなった。

男性に子どもはおらず、本来なら母親が妹として遺産を相続したはずだった。原告は亡くなった母親に代わって自身が相続できると考え、男性の残した土地や建物の所有権移転登記などを申請したが、法務局は「権限がない」として却下。処分の取り消しを求めて同年、国を提訴した。

原告からみてもともと「母親のいとこ」だった男性は、母親の養子縁組によって見かけ上は「おじ」となった。だが、1932年の大審院(最高裁の前身)に「養子縁組前に生まれた子どもは新たな親族関係を生じない」との判例がある。裁判では養子縁組前から遠い親族関係にあった場合に代襲相続できるかが争点となった。

代襲相続に関する民法の規定は、祖父母から孫への「直系」型は養子縁組前に生まれた子どもを明確に対象外としている。一方で、おじ・おばからおい・めいへの「傍系」型に関しては規定に不明瞭な部分があった。

今回のケースは傍系型で、原告側は原告からみて「母親のいとこ」という関係さえあれば、要件を満たしていると解釈できると主張した。国側は「代襲相続の範囲が広くなりすぎる」と反論していた。

第3小法廷は、傍系型の規定にも養子縁組前の子どもは代襲相続の対象にならないとの趣旨があると指摘し「被相続人の親の直系の子孫」であれば傍系でも代襲相続できるとした。今回のケースは異なるため、相続人になれないと結論付けた。

一審・横浜地裁は請求を退けたが、23年1月の東京高裁判決は原告側の主張を認め、国側が上告していた。

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