スマートフォンを使うために必要な「SIMカード」などを他人になりすまして不正に入手する外国人犯罪グループの一員と共謀したとして電子計算機使用詐欺罪に問われた携帯電話販売店(東京都)の副店長だった男性(52)=東京都東久留米市=に対し、福岡地裁は12日、無罪判決(求刑・懲役2年6月)を言い渡した。武田夕子裁判官は「なりすましと認識していたとは言い切れない」と判断した。
判決によると、外国人犯罪グループの一員だったベトナム人男性(37)=同罪などで有罪判決確定=が2022年9月、携帯電話販売店に来店。ともに来店したなりすまし役の2人が他人の運転免許証を使ってSIMカードを計10件契約した。
この際、なりすましと認識しながら契約したとして男性は起訴された。公判で「なりすましに気付かなかった」と起訴内容を否認し、主な争点はグループの一員のベトナム人男性らとの共謀が成立するかだった。
判決は、なりすまし役と名義人の顔がどれほど似ているのかが定かではないため「契約を進めたとしても即座になりすましと知って契約したとはならない」と指摘。男性が会社側が定めた厳重な本人確認のルールを順守していなかったとみられるのは「営業成績のため社内ルールとおりの本人確認をしなかった可能性は否定しきれない」と指摘した。
ベトナム人男性らは公判で「男性はなりすましと分かっていたと思う」と証言していたが、判決は「指示役からの伝聞で正確性には疑義がある。実際の指示役の認識は社内ルールを順守しないので結果としてなりすましによる契約が容易であり、男性を利用していた程度の可能性を否定しきれない」とし「故意や共謀の事実を認めるに足りない」と判断した。
男性は判決後「諦めずに闘ってよかった」と話した。
福岡地検の藤野晃俊次席検事は「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応する」とコメントした。【志村一也】
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