特集は詐欺被害に遭った女性の告白です。後を絶たない特殊詐欺。最近、目立つのがSNSの広告をきっかけに「副業」を持ち掛けてだます手口。実際に被害に遭ったシングルマザーが手口や苦悩を語りました。
■「生きていく中でお金が必要」
被害者・Aさん(30代):
「どうしてもお金は生きていく中で必要なので、大丈夫なのかと思いつつずっと半信半疑のまま」
自身の詐欺被害を振り返る安曇野市の30代の女性・Aさん。小学生の息子を持つシングルマザーです。
被害額は約50万円。手口は「副業」や「小遣い稼ぎ」をかたり、金をだまし取るものでした。
「短時間」「高収入」などの言葉を並べたSNS上の広告で誘い込み、最初は収入を得たように装いますが、後から「損失が発生した」などと金を請求。
警察の分類では「架空請求詐欺」にあたります。実は最近、急増している手口です。
■「内職」という言葉にひかれ
「今回の内職はこれだー」。
10月5日、Aさんは「内職」という言葉にひかれ、この広告をクリックしました。生活を考えてのことだったと言います。
被害者・Aさん(30代):
「あまり仕事ができていないのと、シングルなのでちょっとお金が必要で、内職を探してたんですけど、なかなかちょっと見つからなくて」
■「1日あたり5000円から5万円…」
広告をクリックすると通信アプリに誘導され、女性を名乗るアカウントからメッセージが届きました。
(届いたメッセージ)
「1日あたり5000円から5万円稼ぐことが可能」
「作業は非常に簡単です」
作業は「課題」と呼ばれていて、送られてくる動画投稿サイト上のさまざまな動画をスクリーンショットで撮って送信するというもの。
なぜ、画像を送るだけで報酬が得らるのかわかりませんでしたが、試しにやってみると、スマホの決済アプリで200円の報酬が得られました。
その後、報酬は相手が指定した「暗号資産」による受け取りに変更されました。最初のうちは実際に入出金ができたと言います。
■「高額報酬の課題」を勧められ
すると…。
被害者・Aさん(30代):
「2日間くらいやっているうちに高額報酬をやらないともらえませんよ、みたいな連絡がきて」
相手が指定してきたトークアプリでやりとりをしているうちに「高額報酬の課題」を勧められます。先に現金を振り込んでから「課題」の作業をすると高額報酬が得られるとの説明でした。
指定された口座に現金3万円を振り込み、それまでの要領でやってみると…。
被害者・Aさん(30代):
「1回だったはずの高額のやつが実は4回って書かれていて」
なぜか、もう3回分・9万円を振り込むよう求められます。
■手持ちの現金なく親から金を借り
手持ちの現金がなく親から金を借りて振り込んでやってみると…。
(届いたメッセージ)
「補充課題を完成させるためには、15万円の振り込みが必要です」
「損失額の請求」として15万円を請求されました。
ただ「完了すれば15万円が返り、同時に6万円の報酬も発生します」と言われ、信じてAさんは15万円を振り込みました。
■消費者金融から金を借り
しかし…。
(届いたメッセージ)
「課題タイムアウトの処理に伴い、26万4222円をご用意いただけますようお願い申し上げます」
またミスがあったとしてさらに26万円余りを振り込むよう言われます。
被害者・Aさん(30代):
「全部間違えたって言われるので、自分がいけないから金額払っているんだろうなっていうのしかなかったので」
ミスや損失があったと相手を慌てさせるのは詐欺の常套手段。Aさんは消費者金融から金を借りて振り込みました。
■さらに74万円余り求められる
すると、そのあとも「間違い」を指摘され、今度は74万円余りを求められます。
Aさんはようやく、ここで…。
被害者・Aさん(30代):
「もうこれは払えない、無理っていうのもあって詐欺に気づいたというか。これでうまくいけば生活が何とかなるかなとは思ったのと反面、これ本当に大丈夫なんだろうかというのはずっと心の中にあって」
家族や周囲に内容を話し、警察にも相談。自分が詐欺被害に遭ったことがわかりました。
被害者・Aさん(30代):
「相手に対して悔しいとかいうよりは、引っかかっちゃった自分に悔しい」
■「副業」かたる詐欺が急増
物価高を背景に生活の苦しい人が増えていることもあってか、この「副業」をかたった詐欺が急増しています。
2024年に入ってからの架空請求詐欺は10月末までで75件。そのうちの22件が「副業名目」でした。2023年はほとんどなかったということです。
副業をかたる詐欺の特徴は。
県警 特殊詐欺抑止対策室・落合美華 課長補佐:
「電話で来るのではなくてSNSで広告を見て、SNSでやりとりをしてだまされてしまう」
■「SNS」使った特殊詐欺…
SNSを通じて投資などを持ちかけて金をだまし取る「SNS型」が今年に入って急増していますが、架空請求などを含む従来の「特殊詐欺」もSNSが利用されています。
2つを合わせた件数は10月末までで292件。そのうち173件・約6割がSNSがきっかけでした。
県警 殊詐欺抑止対策室・落合美華 課長補佐:
「SNSでやりとりする方は若い方だけではなくて年齢が高い方もやるようになったりする。(SNSが)身近な存在になったことで被害が増えている。SNSはやりとりする前に気づいてもらいたいが、やりとり始めるとなかなか気づけない。ちょっとおかしいなと思ったら誰かに相談、警察に相談してほしい」
■大きな喪失感を抱え…
1週間で50万円をだまし取られたシングルマザーのAさん。今、大きな喪失感を抱えています。
被害者・Aさん(30代):
「(なくしたものは)現実にはお金だけなんでしょうけど、ここから困窮してくだろうなと。どうしても先がちょっと見えない。(過去の自分には)楽して稼げるものはないよと、一番最初に(声を)かけたい」
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