初めて海上に出た自衛隊の中型級輸送艦「ようこう」=広島県尾道市沖で2024年11月28日午前9時34分、松浦吉剛撮影
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 南西諸島の防衛力強化に向け、防衛省が新たに導入する中型級輸送艦(全長120メートル、幅23メートル、基準排水量3500トン)の進水式が28日、広島県尾道市であった。同省は「ようこう」と命名。来春新設される「自衛隊海上輸送群」(仮称)に配備され、主に作戦準備段階で本州から島しょ部への部隊や車両、物資の輸送を担う。乗組員の大部分を海上自衛隊ではなく陸上自衛隊の隊員が占めるのが特徴とされる。

 防衛省によると、海上輸送群は防衛相直轄の陸海空共同の部隊として2025年3月、海自呉基地(広島県呉市)に100人規模で発足する。27年度に中型級(乗組員約40人)2隻と小型級(同約30人)4隻、小型級よりコンパクトな「機動舟艇」4隻がそろい、数百人規模に増える見込み。大まかには、中型級が本州と奄美大島や沖縄本島を、小型級が沖縄本島と宮古島や石垣島をそれぞれつなぎ、機動舟艇は離着岸が難しい小島に向ける計画だ。

 「ようこう」は尾道市のメーカーが手掛け、建造費は54億円。輸送性能は千数百トンで車両数十台を積載できる。海上輸送群の進水式は2隻目となり、41億円で建造された小型級輸送艦「にほんばれ」(全長80メートル、幅17メートル、基準排水量2400トン)とともに25年3月に就役し、操船訓練に使用される。2隻とも機関銃を備えるが火砲は設置しない。

 防衛省は16年3月以降、南西諸島への部隊配備を進めているが、全長1200キロと広大な地域のため、有事には部隊や物資を迅速に展開する輸送力が欠かせない。海自は慢性的に船乗りが不足し、中国の海洋進出や北朝鮮の弾道ミサイル発射などの対応にも追われ余裕がなく、海上輸送群は陸自が主体。19年度から陸自隊員が海自の教育機関や輸送艦で訓練を積んでいる。

 陸自トップの森下泰臣陸上幕僚長は10月の定例記者会見で「海自にいろいろと教わりながら乗組員を育成してきた。今後も一層の支援をいただきながら共同の部隊をつくり上げなければならない」と強調した。【松浦吉剛】

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