フランス・パリにある国連教育科学文化機関(ユネスコ)の本部=2015年10月18日、賀有勇撮影

 回答したインフルエンサーの6割が、情報の正確性を確認しないままシェアし、信頼度は「いいね」の数で測る。国連教育科学文化機関(ユネスコ)がこのほど公表したソーシャルメディアで活躍するインフルエンサーに関する調査報告書で、そんな実態が明らかになった。

 調査は米大学の研究チームが主体となって、今年8~9月に実施。英語や仏語、ポルトガル語、アラビア語など八つの言語圏(日本語は含まず)の45の国と地域で活躍するソーシャルメディアのインフルエンサーのうち、最低1000人のフォロワーを持つ500人から回答を得た。

 制作するコンテンツに含まれる情報の正確性の検証に関する質問では、シェアする前に全情報の正確性を検証しないとの回答は62%に上った。

 また、オンライン上の情報の信頼度を測る指標について尋ねた項目では、42%が「『いいね』や閲覧数の多さ」と回答。2番目は、「信頼できる友人や専門家がシェアしている」(21%)だった。「情報を裏付ける根拠や文書が存在している」との回答は17%にとどまった。

 強い影響力を持つことの多い、ソーシャルメディア上のインフルエンサーを巡っては、最近行われた選挙でも耳目を集めた。

 米大統領選では、民主・共和両陣営が、SNS(ネット交流サービス)で活躍するインフルエンサーに取材を優遇するなどした一方で、偽情報の拡散が問題となった。

 兵庫県知事選でも、インフルエンサーの発信が有権者の投票行動に一定の影響を及ぼした可能性が指摘されている。

 調査報告書は、十分なファクトチェックがされないままコンテンツが拡散されていることについて「物事や情報を多角的に検討して理解する能力を持たなければ、コンテンツの信頼性と完成度が損なわれる可能性がある」としたうえで、「市民の議論に重大な影響」を及ぼすことへの懸念が示された。

 そして、「世界中のデジタルコンテンツ制作者のメディアと情報のリテラシー教育を強化する必要がある」と結論付けた。【千脇康平】

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