「おいしい和歌山」の表紙

 スポンサーの意向とは無縁、ウェブの書き込みや既存のガイドブックにも一切惑わされず足で調べ、自信を持って薦めたい味の店のみを紹介する書籍「おいしい和歌山」が12月1日、刊行される。和歌山県内の書店のほか12月中旬からアマゾンでも販売する。

 本作りの中心は岩出市出身のライター、牧五百音(いをね)さん(39)だ。「私は郷土愛が強いわけではないのですが、県外の人に『和歌山って何もないよね』と言われるのは悔しい。また、いいお店があるのに知られておらず残念という県民の声も聞きます。だったら一から本を作ろう、と」。リサーチや写真、デザイン、校閲などを分担する編集チームを結成し、出版社を通さずに思う存分手間をかけた。

「おいしい和歌山」の本作りの土台となったアンケートの束=編集部提供

 東京在住の牧さんはテレビドラマ「0・5の男」などの脚本を手がける一方、雑誌やウェブ向けにグルメ記事を多数執筆してきた。この2年は拠点を岩出に戻して今回の本の制作に没頭。知り合いのまた知り合いと数珠つなぎに約500人にアンケートして集めた口コミを元に、2023年春から1年半かけて740軒を食べ歩いた。ラーメンだけで100軒に達したという。

 味の評価に客観性を持たせるため、食べ歩きには同級生たちに同行してもらった。出された料理は絶対に残さなかった。味だけでなく店主の人柄や景色なども考慮し、「来てよかった」と確信すれば取材を申し込み、断られても何度も頼み込んだ。土産やプレゼントにふさわしい銘菓や地酒などを販売する店も含め、掲載したのは県内全域の厳選151軒。店主の言葉に耳を傾け、大切にしている思いを丁寧につづった。

 食材の生産者や県出身の著名人へのインタビュー欄も充実。毎日新聞和歌山県版で「カントリースケッチ」を連載中のイラストレーターで絵本作家のすけのあずささんがルートマップや観光地の挿絵を描いている。

 B5判192ページ、税込み1980円。12月1日には、紀の川市のJA紀の里ファーマーズマーケットめっけもん広場▽白浜町のとれとれ市場▽新宮市のスーパーセンターWAY南紀店――の3カ所で午前9時から本を販売し、購入した人には先着で掲載店が用意したプレゼントがある。【鶴谷真】

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