阪神大震災から29年となった神戸市。追悼会場の東遊園地には「1995 ともに 1・17」の文字が浮かび上がった=2024年1月17日午後5時34分、本社ヘリから

 阪神大震災から30年となる2025年1月17日、神戸市中央区の東遊園地である追悼行事の規模が縮小される見込みであることが関係者への取材で明らかになった。1月24日に同会場で始まる光の祭典「神戸ルミナリエ」の準備の影響でスペースに制約が生じるためだ。追悼行事の主催者は「これまで通り灯籠(とうろう)を置けなくなる」と懸念している。

 追悼行事は「1・17のつどい」。同会場で毎年開催され、発生時刻の午前5時46分に震災遺族らが黙とうをささげる。数千~1万本の灯籠を並べ、24年は「ともに」、23年は「むすぶ」の文字がかたどられた。

 光の回廊などの電飾で知られるルミナリエは、震災復興の象徴として1995年度から毎年12月に開かれてきた。新型コロナウイルス禍の代替行事を経て開催された29回目の23年度から、開催期間が年をまたいだ24年1月に変更された。鎮魂の意味合いを高めるのが狙い。

 つどいを主催する実行委員会によると、ルミナリエを主催する組織委員会から11月下旬、作品を配置する見取り図が提供された。会場の芝生広場に大型作品の設置を示す赤い図や線が描かれており、毎年灯籠を並べている場所と重なっていた。このままでは設置数が限られてしまうという。

灯籠の配置スペース

 組織委によると、この作品は壁状の装飾作品「スパッリエーラ」(幅78メートル、高さ最大22メートル)と、光のドーム「カッサ・アルモニカ」(高さ約11メートル、直径約7・6メートル)。29回目は光のドームを園内の別の位置に展示していた。作品の配置案は固まっており、12月上旬から着工予定だという。

 29年目のつどいでは、ルミナリエの作品が会場脇にあることについて、来場者から「なぜルミナリエ(の電飾)があるのか」などの問い合わせが約50件あったという。

 組織委の担当者は「実行委の要請を受け、限界までスペースを空けられるように調整した」とする一方、「調整中だが、つどいが終わってから作品の設置工事を始めるなど影響を最小限にとどめたい」としている。園内には既に資機材が置かれ始めている。

 実行委は、これまでも組織委の対応に不信感を募らせてきた。今年の開催直前にはルミナリエ用のテントでぼやが起きるなど安全上の懸念が生じ、組織委に警備計画の改善を申し入れた。

 つどいの実行委員長を務めるNPO法人「阪神淡路大震災1・17希望の灯(あか)り」の藤本真一代表理事(40)は「安全面の不安が払拭(ふっしょく)されなければ、最悪の場合はつどいが開催できなくなる可能性もある。事前の相談もなく、計画を一方的に進める組織委の対応は、犠牲者追悼を軽視していると言わざるを得ない」と話している。【山本康介】

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