記者会見する日本被団協の田中熙巳代表委員(2日、東京都千代田区)

ノーベル平和賞受賞が決まった日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は2日、東京都内で記者会見した。代表委員の田中熙巳さん(92)は10日の授賞式出席を控え、核兵器廃絶の必要性を感じていない世界の人にも「核廃絶に向けて活動しなければならないとの思いを持ってもらいたい」と抱負を述べた。

ノルウェー・オスロで開かれる授賞式には日本被団協の代表委員3人が出席。約20分の演説を予定する田中さんは「原爆の非人道的被害について、必ずしも被害の状況が想像されていない。中身が伝わらないこともある。そうではない受け取りをしてほしいと訴えたい」と強調した。

演説原稿は田中さんが1カ月余りかけて作成し、日本被団協幹部の間で内容を吟味したという。原稿作成にプレッシャーを感じ、「夢の中でも書いているくらいだった」と振り返る田中さん。運動の歴史や自身の被爆体験などに文量を割き、核廃絶運動を引き継ぐ若い世代への期待にも言及すると明かした。

日本被団協は8日午前に日本を出発し、現地に5日間滞在する。授賞式のほか、ノルウェー国王夫妻との謁見、現地の高校、大学との交流などが予定されている。

事務局次長、浜住治郎さん(78)は現地の学校で胎内被爆者として歩んだ人生を証言する。父は広島の爆心地近くの会社に向かったまま、帰らぬ人になった。「再び被爆者をつくるなという私たちの思い、核兵器は絶対に使ってはならないということを、私の話から伝えたい」と意気込みを語った。

日本被団協は1956年に結成。核の惨禍を世界に訴えかけ、核廃絶運動を草の根レベルでけん引してきた。ノーベル賞委員会は10月、長年の取り組みを評価して平和賞授与を発表した。

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