ATM(現金自動受払機)=2019年5月8日、曽根田和久撮影

 被害が相次ぐ特殊詐欺を防ぐための条例改正を検討してきた大阪府の審議会は6日、高齢者が携帯電話で通話しながらのATM(現金自動受払機)操作を禁止するなどとした5項目の改正案を府公安委員会に答申した。

 府は具体的な対策案をさらに検討し、パブリックコメント(意見公募)を経て、来年2月の府議会に改正案を提出する方針。可決されれば事業者や府民らに対し特殊詐欺対策で禁止や義務を課す条例は全国初となる。

 答申で示されたのは、①事業者は高齢者が携帯電話で通話しながらATMを操作しないための措置を講じる。高齢者はそれらの措置に従い、通話しながらATMを操作してはいけない②金融機関は特殊詐欺被害の恐れのある取引を認めた場合は警察へ通報する③事業者は、一定額以上のプリペイド型電子マネーの販売時に特殊詐欺の被害に遭う恐れがないかを確認するための措置を講じる④金融機関は高齢者のATM取引における一日の振込限度額を引き下げる⑤府、警察は特殊詐欺の手口、発生した日時などに関する情報を発信する――の5項目。いずれも罰則規定は設けないとする。

 府内は昨年、一日平均で約1000万円の特殊詐欺被害が発生。被害件数は統計史上最多の2656件(被害総額約36億6000万円)に上った。被害者のうち、65歳以上の高齢者が85%以上を占めた。今年は10月末までに一日平均約1600万円の被害が発生している。

 事態を重く見た吉村洋文知事は6月、被害を防ぐため条例改正を検討していくと明らかにした。大学教授や銀行、フランチャイズチェーンの業界団体幹部らで構成する審議会が設置され、義務化した場合の効果や事業者の負担増などについて慎重に議論を重ねてきた。

 答申を受け、吉村知事は「特殊詐欺を『絶対許さない』という規制を強化する条例をつくり、高齢者の財産、生活を守ることに力を入れたい」と述べた。【村上正】

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