日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に贈られるノーベル平和賞の授賞式が10日、ノルウェー・オスロで開かれます。日本被団協は「核兵器のない世界」を目指し、被爆体験の証言活動に積極的に取り組んできました。
しかし今、ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射を発端に、核兵器を巡る世界情勢は危うくなっています。核兵器が使われたら何が起きるのでしょうか。そもそも、なぜそこまで恐ろしい兵器なのでしょうか。わかりやすく解説します。
Q 1945年8月6日に原爆が落とされ、広島では何が起きたの?
A 原爆は広島市中心部の上空約600メートルで爆発しました。市によると、核分裂で生まれたエネルギーで、爆心地では地表の温度が3000~4000度になったと言われています。
爆発の瞬間、爆発点の圧力は数十万気圧に達し、強烈な爆風が生まれました。爆心地から500メートル地点では、1平方メートル当たり11トンの圧力のある衝撃波が生じ、100メートル地点の風速は秒速280メートルに上ったと考えられています。高温と高圧による火災で市街地は焼き尽くされました。
Q 甚大な被害があったんだね。
A 爆心地から半径2キロの範囲では、建物のほとんどは倒壊・焼失しました。原爆投下時、広島市内には居住者や軍人、通勤者ら計約35万人がいたと考えられています。
爆心地から1・2キロでは、被爆当日にほぼ半数が亡くなり、それよりも爆心地に近いエリアでは80%以上が死亡したとみられています。この年の12月末までに約14万人が亡くなったとされます。
3日後の8月9日に原爆が投下された長崎市では12月末までに7万3884人が犠牲になりました。
Q 他にどんな影響があったの?
A 原爆投下により、高温や爆風だけでなく、大量の放射線が放出されました。放射線は人間の細胞を壊し、内臓にも悪影響をもたらします。
被爆直後には、発熱や下痢、脱毛、吐血など「急性障害」と呼ばれる症状が表れました。年月がたった後、白血病を含むがんなどを患う被爆者も多くいました。
Q 原爆が投下された時、爆心地にいなかった人も影響を受けた?
A 爆発後も地上には「残留放射線」が残りました。このため、肉親・知人の捜索や、救護・医療活動をするために爆心地近くの市街地に入り、被爆した人もいます。
また、原爆投下直後にすすやほこりが巻き上げられて、広島市以外にも広範囲に降り注いだ放射性物質を含む「黒い雨」を浴びた人もいます。
こうした被爆者も、原爆投下時に市街地にいた人たちと同じような症状に苦しみました。影響は身体だけではありません。被爆者という理由で差別を受けるなど、結婚でも困難が伴いました。
さらに、被爆者の子(被爆2世)や孫(3世)でも、自分の体に影響が出ないかと不安に思う人もいます。世代を超えて長期間にわたり、大きな傷を残しているのです。
Q 再び核兵器が使われたら、どうなってしまうの?
A 放射線物理学や医学、災害工学の専門家らが2014年、外務省の研究委託を受けて、広島、長崎原爆のデータや米政府の報告書などを参考に、核被害のシミュレーションを発表しました。
人口100万人の都市に、広島型原爆と同程度の威力のものが使われた場合、6万6000人が即死し、20万5000人が負傷すると推計されました。
その約60倍の威力のものでは、郊外も含めて即死は37万人、負傷者は46万人にも達するとされました。
米露などは、これよりもさらに威力の強い核兵器を開発しており、実際に使用されれば破滅的な結果をもたらします。
直接的な被害だけではありません。世界に張り巡らされた流通網への打撃や、金融市場の混乱など、世界的規模の経済的被害が生じる恐れもあります。核兵器の使用は絶対許してはいけません。【根本佳奈】
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