日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に贈られるノーベル平和賞の授賞式が10日、ノルウェー・オスロで開かれます。日本被団協は「核兵器のない世界」を目指し、被爆体験の証言活動に積極的に取り組んできました。
しかし今、ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射を発端に、核兵器を巡る世界情勢は危うくなっています。核兵器が使われたら何が起きるのでしょうか。そもそも、なぜそこまで恐ろしい兵器なのでしょうか。わかりやすく解説します。
Q 世界にはどれぐらいの核兵器があるの?
A スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が調査しており、2024年1月時点の推計で、計1万2121発あるとされます。
最多はロシアの5580発。次いで米国が5044発で、米露で全世界の9割弱に上ります。このほか、中国500発▽仏290発▽英国225発――で、この3カ国も合わせた核保有5大国で、96%を占めています。
Q 新たに保有する国も出てきたの?
A SIPRIの推計では、インドが172発、パキスタンが170発、イスラエル90発、北朝鮮50発とされています。近隣国との関係が不安定になっていることが保有の背景にあります。
インドとパキスタンは互いに戦争を繰り返しており、対立は今も続いています。イスラエルはパレスチナ自治区ガザ地区に侵攻したほか、同じ中東諸国との紛争も抱えています。北朝鮮は日米韓と対決し、06年に初の核実験を行い、これまで計6回実施しています。
Q 核兵器の数自体は減っているの?
A 冷戦末期だった1980年代後半がピークで、7万発以上あったといわれています。冷戦が終わり、米露が核軍縮に取り組んできたことから数は減っています。
冷戦後の91年、米露(当時はソ連)間で戦略兵器削減条約(START)が交わされ、10年間で両国の核弾頭は半減しました。ロシアの財政難や、ロシア以外の国の台頭など米国を取り巻く国際情勢の変化が核軍縮の背景にあります。
10年には、核弾頭や運搬手段の総数を制限する新戦略兵器削減条約(新START)が調印され、21年には5年間の延長が決まりました。
Q 核軍縮に向けて世界各国はどのように取り組んでいる?
A 核兵器が世界に広がるのを防ぐため、核拡散防止条約(NPT)があります。核保有を米露英仏中に限定する一方、それ以外の国の保有を禁じ、5カ国には核軍縮の交渉義務を課しています。
「早い者勝ち」を認めた不公平ともいえる内容ですが、核拡散を防ぐことを重視した非保有国も賛成し、70年に効力を発揮(発効)しました。
加盟は191カ国・地域に上ります。イスラエル、インド、パキスタンは未加盟で、北朝鮮は03年に一方的に脱退を表明しました。
Q 核兵器禁止条約というのも聞いたよ。
A 核兵器の保有や使用を全面的に禁止する条約です。17年に国連本部で開かれた交渉会議で、国連加盟国の6割を超える賛成多数で採択されました。
現在、約70の国・地域が批准しています。核保有国や、「核の傘」の下にある日本は加盟していませんが、被爆者団体を中心に日本にも批准を求める声は高まっています。
Q ロシアが核兵器を使うかもしれないので不安だよ。
A ウクライナ侵攻を巡り、核兵器を使う可能性をちらつかせるなど核の脅威は増しています。また、中国は核戦力を強化すると米国は指摘しており、核軍縮を巡る各国の足並みはそろいません。
減っているとはいえ、全世界にある1万2000発あまりの核兵器は人類を何度も絶滅させられる威力を持ちます。
核なき世界に向けてどのように歩みを進めていくのか、国際社会の真摯(しんし)な取り組みが不可欠です。【高木香奈、安徳祐】
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