「核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきた」。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)へのノーベル平和賞授賞理由では、被爆者による証言の力がたたえられた。毎日新聞が2006年秋から続ける記録報道「ヒバクシャ」はこれまでの掲載が計307回を数え、「同じ体験をしてほしくない」との思いで証言し、行動する人たちの姿を伝えてきた。被爆者が後世に託した言葉を改めて届けたい。【構成・宇城昇】
狂気と正気の根比べ
「核実験は狂気。我々は正気。狂気と正気の根比べですよ」
長崎の元教師、山川剛さん(88)は平和教育に力を入れてきた。「核実験に抗議する長崎市民の会」の代表でもあり、各国による核実験への抗議の座り込みは1974年8月に始まり、今年で50年になった。平和祈念像の前で座り込むのは被爆者だけでなく、高校生平和大使ら若い世代の姿も。10年秋の取材に語った言葉を何度も繰り返している。
核兵器を憎む
「使った米国人は憎まない。使われた核兵器を憎む。それが悪そのものだから」
長崎大学長などを歴任し、長崎の平和運動をリードした土山秀夫さん(17年に92歳で死去)が10年春の取材に語った。長崎原爆の日に市長が読み上げる平和宣言の起草委員を長く務め、核兵器廃絶や恒久平和を求める市民運動を理論的な面からリードした。
人類は愚かじゃない
「『人類は愚かじゃない』という希望はまだ持っているし、持ち続けていたい」
旧制中学3年時に広島で被爆した森下弘さん(94)は元高校教師。平和教育に力を入れながら、国内外での被爆証言も続けてきた。ウクライナでの戦火がやまない23年夏の取材で、平和をあきらめない信念を語った。
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