厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で、竹内紀臣撮影

 厚生労働省は10日の社会保障審議会年金部会で、60歳未満で遺族厚生年金を受給している場合、子どもが18歳以上になったら給付を5年に限る案を示した。これまで男性は55歳以上でないと受給対象にならなかったが年齢要件を撤廃し、受給できるようにする。女性は年齢に関係なく生涯にわたって受給できる状態から大幅な短縮になる。このため、現在受給中の人に不利益が出ないよう今後20年かけて段階的に移行する。

 遺族厚生年金は厚生年金に加入中もしくは加入していた人が亡くなった時、配偶者ら遺族に支給される。男性が家計の主な担い手だった時代を背景に女性側に手厚い。現役世代を中心に共働きが増える中、厚労省は男女差是正の観点から制度の見直しに着手していた。

 女性に対しては生涯にわたる終身給付ではなく、新たに受給する男性と同様、子どもが18歳になった後は5年間の有期給付とする。養育費用や就労に向けた準備期間のための給付と位置付ける。支給額は現行よりも上乗せする。

 ただ、障害があったり、所得が少なかったりするなど生活再建に至らない場合に備え、5年以降も給付を継続できる仕組みも設ける。子どもがいない場合については既に有期給付に見直す方針を示している。継続給付の仕組みは子の有無に関わらず対象とする。60歳以上については見直さない。

 年金部会では、パートら短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大の進め方も議論。2029年度までに、①月額賃金8万8000円(年収106万円)以上とする賃金要件の撤廃②現在従業員51人以上とする企業規模要件の撤廃③5人以上の個人事業所のうち適用除外だった飲食や理美容、宿泊業などへの適用拡大――の順で進める方針を確認した。施行日など詳細は、与野党との協議を経て関連法案に盛り込む方針。【宇多川はるか】

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