家族内での「心中」が疑われる事例が2018~22年に、全国で少なくとも254件あり、486人が命を絶っていた。関係別では親子が160件で最多で、夫婦88件、きょうだい4件、その他の親族2件だった。
毎日新聞が、地方版も含め掲載された記事と、共同通信の配信記事を調べた。43都道府県警で事例の取り扱いがあり、警視庁と愛知の各20件が最多で、埼玉と兵庫で各17件▽大阪16件▽茨城14件――などだった。
記事の内容からは、子どもや配偶者が病気を患うなどして、介護や看病をする側が手に掛けた後に自死していたり、生活が困窮して心中を図ったりするなどの事案が確認された。
毎日新聞が個別に取材したケースでは、神奈川県内でパン屋を営む60代の兄弟が22年10月、東京都内で一緒に死亡しているのが見つかった。
知人らによると、兄弟は親の代から続くパン屋を切り盛りしていたが、弟は重いヘルニアを患い入院が決まっていたという。兄弟のどちらかが「全て私の責任です」と書いたメモが2人の自宅から見つかっており、警視庁は自殺とみている。
全国の自殺者は03年に3万5000人に迫り、警察庁が自殺統計を取り始めて以降で最多となった。その後、減少傾向に転じたが、近年も年間2万1000人ほどが命を絶っている。
家族問題に詳しい大阪大の小西真理子准教授(倫理学)は「ケアの必要な家族がいる世帯は依存関係が強くなり、家庭内で問題を抱え込まざるを得ないケースもある。当事者のニーズを聞き取りながら、医療や福祉など必要な支援にいかに結びつけるかが大切だ」と指摘する。【岩崎歩】
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