厚生労働省は厚生年金の積立金を活用し、将来の国民年金の給付水準を底上げする案について、今年度65歳になる人の「モデル年金」では、合計31万円減るとの試算を公表しました。

一方、「就職氷河期世代」以降の人が年金を受け取る2040年度以降には従来よりも給付水準が上昇するとしています。

年金制度では、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社などに勤務する人が加入する「厚生年金」の2階建てになっています。

2つの年金の財源は別々に管理され、少子高齢化が進み現役世代が減っても制度が保てるよう、「マクロ経済スライド」という仕組みで年金の給付水準を抑えています。

厚生年金は、女性の労働参加が進んでいることなどから、財政が安定していて、年金を減額する期間は2026年度に終了します。

一方で国民年金は、デフレ下で計画通り減額が進まない期間があったため、財政が悪化し、年金の減額は2057年度まで長引く見通しです。

そこで、厚労省は厚生年金の減額期間を延ばして浮いた財源を国民年金に回すことで、すべての人が受け取る国民年金の減額期間を縮め、底上げする方針です。

これによって2036年度以降の国民年金の給付水準が現在の想定より3割改善する見通しです。

これに対し厚生年金の減額期間が長くなることで、厚生年金を受け取る人は一定期間、受給額が減ります。

厚労省が示した試算では、40年間働いた会社員の夫と専業主婦の「モデル年金(今年度月額22万6000円)」について、今年度65歳になる人では平均余命までの22年間の受給で31万円減るとしています。

一方、バブル崩壊の影響で就職難だった「就職氷河期世代」以降の人が年金を受け取る2040年以降には増額に転じて、1975年度生まれの人の「モデル年金」では、22年間で451万円増え、従来よりも給付水準が上昇するとしています。

基礎年金の給付水準が改善する場合、財源の半分は国庫でまかなっているため、将来の国の負担が2070年度には2兆6000億円増えると試算されています。

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