たいまつを手に平和を訴えて市街地を歩く人たち=オスロで2024年12月10日、猪飼健史撮影

 ノルウェーのオスロ市庁舎で10日行われた日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)へのノーベル平和賞授賞式で、ノーベル賞委員会のヨルゲン・バトネ・フリードネス委員長は「核のタブーを築き上げるにあたり、その貢献は他に類を見ないものだった」とスピーチし、功績をたたえた。

 フリードネス氏は日本被団協の証言活動について、「核兵器による想像を絶する痛みや苦しみを(聞き手が)自分のものとして実感する手助けをしてくれた」と評価。「身体的な苦痛やつらい記憶にもかかわらず、自らの体験を生かして平和への希望に尽力することを選んだ、全ての被爆者をたたえたい」と強調し、被爆者の体験談に耳を傾けるよう呼びかけた。

原稿にない「もう一度繰り返します」

 田中熙巳(てるみ)代表委員(92)は受賞演説で、長崎での被爆体験や核なき世界への決意をひと言ひと言かみしめるように伝えた。

 また、原爆犠牲者に対し日本政府が一切の補償を拒んでいると指摘する中で、当初の演説原稿にはない「もう一度繰り返します」と前置きした上で、「原爆で亡くなった死者に対する償いは、日本政府は全くしていない」と政府の姿勢を2度にわたり批判した。

 約21分間の演説が終わると、大きな拍手が約1分30秒にわたり続き、聴衆席では長崎被爆者で日本被団協事務局次長の和田征子(まさこ)さん(81)らが、目頭を押さえたり、涙を拭ったりする姿も見られた。

 ノーベル賞委員会によると、核兵器保有5大国のうち英米仏の代表は出席した一方、露中は欠席。事実上の核保有国とされるイスラエルも欠席した。

 授賞式後の10日夜には受賞者を祝福する恒例のパレードがあった。参加者がたいまつを掲げ、「ノーモア・ヒバクシャ、ノーモア・ウォー」とシュプレヒコールを上げながらオスロ市内を行進した。【オスロ安徳祐】

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